<連載>ミリ波のチカラ -超高速通信がもたらす新しい体験-[第14回]甲子園球場と京セラドームでミリ波の実力を測定してみた

人口密度が高く、かつ見通しが良いというミリ波の特徴が活かしやすい環境の代表例として挙げられるのが「スタジアム」だ。では、その特異な環境において、ミリ波はどれほどの実力を発揮できるのか。連載8回目となる今回は、阪神甲子園球場および京セラドーム大阪の2カ所でミリ波の受信電力とダウンリンクスループットを計測した結果を紹介し、その実力を検証する。

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ミリ波の帯域幅は圧倒的である。

各携帯通信事業者が持つ周波数の中でも、ミリ波は400MHzという極めて広い帯域幅を有し、他の周波数帯の総帯域幅に相当する規模を持つ。

無線ネットワークのキャパシティは帯域幅に比例するため、400MHzという広帯域を有するミリ波は、それだけ大きなキャパシティを確保できる。つまり、ミリ波は高速かつ大容量の通信を実現するのに最適な周波数帯であるといえる。

こうした特長を活かし、ミリ波は人口密度の高い駅や繁華街、そして多数の人が一箇所に集まるスタジアムなどに設置されている。

本稿では、スタジアムにおけるミリ波の実力を実測データから確認するとともに、そのアンテナ設置位置についても紹介しよう。

京セラドーム大阪に設置されたミリ波基地局

京セラドーム大阪に設置されたミリ波基地局

スタジアムが「ミリ波に有利」な理由

スタジアムは、無線通信の観点から見ると非常に特殊な環境である。ドーム、競技場、アリーナなど形態はさまざまだが、本稿ではこれらを総称して「スタジアム」と呼ぶ。

外観は異なっていても、スタジアムには次のような共通する特徴がある。

・直径200m~300mの大空間
・数万人が一箇所に密集する環境
・屋根により全体・一部が覆われる構造(ドームなど)

例えば、阪神甲子園球場は観客席を含め直径約220mの開空間である。一方、同じように人口密度は高いものの、都心部の駅構内は壁や階段が多く、十数m幅の通路が複雑に入り組んでいる。繁華街は屋外で見通しがよい場所も多いが、建物群が電波伝搬を遮る場面も少なくない。

このように考えると「人が密集する大空間」という環境は、実はかなり特異である。

スタジアム内では見通しが良好であることが多く、これはミリ波にとって有利な条件となる。電波を届ける距離も概ね100~200m程度であるため、他の周波数同様、ミリ波がスタジアム全体に電波を届けることは十分可能である。

さらに、スタジアムではトラフィックが瞬間的に急増する。

・数万人が一斉にスマートフォンを掲げる瞬間
・SNS 投稿が同時多発的に行われる瞬間
・大容量データを送信する瞬間

このような「同時多発・高密度」のトラフィック環境では、ネットワーク全体のキャパシティがボトルネックとなる。広帯域を持つミリ波を活用することで、スタジアム全体のキャパシティを大幅に引き上げ、瞬間的なトラフィック集中にも対応することが可能となる。

佐々木蒼一郎

ソフトバンク所属。2023年より、スタジアム・ドーム等の大規模施設を中心に、モバイルネットワークの設計方針策定や現地測定・解析に従事。現場で体感したミリ波の可能性を原動力に、ミリ波が当たり前に使われる社会の実現を目指して活動中

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