携帯値下げで注目の「eSIM」 5G SA化も普及後押し?

これまで一部機種での採用に限定されていたeSIM。新料金プランをきっかけに、通信キャリアの導入が本格化しつつある。IoT分野では、5G SA対応eSIMのローカル5Gでの活用が進みそうだ。

菅政権手動の携帯料金値下げに関連して、「eSIM」への注目が高まっている。

embedded SIMの略称であるeSIMは、端末に組み込まれたモジュールに電話番号や契約者情報、キャリア情報といったプロファイルをインストールして使用する。

従来のSIMは、物理的なSIMカードにプロファイルがあらかじめ書き込まれており、通信キャリアの変更時にはSIMカードそのものを差し替える必要があるのに対し、eSIMはネットワーク経由で遠隔から自由にプロファイルを書き換えることが可能だ。

物理SIMと比べて手軽に通信キャリアを乗り換えられるため、新規参入の楽天モバイルはいち早く対応し、「Rakuten mini」「Rakuten Hand」などeSIM専用スマートフォンを次々に投入している。一方、大手3キャリアは加入者の流出につながる可能性があることに加えて、セキュリティ上の問題を理由に、本格導入に慎重な姿勢を取り続けてきた。現状、AppleWatchのセルラーモデルに3キャリアが対応しているほか、NTTドコモの「キッズケータイ SH-03M」「ワンナンバーフォン ON 01」など一部機種に限定され、3キャリアは国内のスマートフォン向けにはeSIMを採用していない。

だが、こうした状況が変化しようとしている。

1つのきっかけとなったのが、総務省が2020年10月に公表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」だ。

アクション・プランでは、乗り換えや競争の促進による携帯料金の値下げを目指しており、事業者間の乗り換えを手軽にする取り組みの1つとして「eSIMの促進」が盛り込まれている。

通信キャリア3社は、携帯料金を値下げするには、人件費などのコストを削減できるオンライン販売を強化せざるをえず、各社から相次いでオンライン専業ブランドの提供が発表された。

先陣を切ったドコモの「ahamo」は、月額2980円(20GBのデータ容量と1回当たり5分以内の通話料無料を含む)と安価な代わりに、手続きはすべてオンラインで行うというものだ。サービス開始時点ではSIMカードのみの対応だが、eSIMについても今後検討することを明らかにしている。

ドコモの対抗策としてソフトバンクは、傘下のMVNOであるLINEモバイルを完全子会社化し、オンライン専業ブランド「SoftBank on LINE」を今年3月に立ち上げる。月額利用料はahamoと同じだが、こちらはサービス開始当初からeSIMにも対応している。

ドコモ、ソフトバンクの発表を受けて、KDDIは1月13日にオンライン専業ブランド「povo」を発表した。2社より月額利用料を500円安くしているほか、「データ使い放題」などの“トッピング”をオンラインで自由に選択できるのが特徴だ。SIMカードとeSIMの両方利用でき、今夏からは5Gにも対応する。

KDDIは2020年11月、シンガポールのCircles Asia社と提携し、オンラインに特化したMVNOの新会社「KDDI Digital Life」の設立を発表した。当初は、eSIMに特化し手続きなどもオンラインで行えるサービスをMVNOで提供する計画だったが、ドコモとソフトバンクが相次いでオンライン専業ブランドを発表するなど競争環境の変化を受けて、auブランドで提供することにしたという。

政府からの値下げ要請に加えて、もともと携帯ショップではスタッフの業務負荷が課題となっていたうえ、最近は新型コロナウイルスの感染リスクもある。このため、オンライン化の流れはこれからも続き、それに合わせてeSIMの活用も進むことになりそうだ。

月刊テレコミュニケーション2021年2月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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