<特集>コロナ・5G・AIZoom Japan佐賀氏「コロナ後もWeb会議は定着。次はPBXとの境界なくす」

コロナ危機がICTの利活用にもたらした最大の変化の1つが、Web会議の「社会インフラ化」だ。 そのなかにあって、Web会議の“代名詞”としてのポジションを確立したZoom。 その一方、セキュリティ面での問題も露呈した。 Zoom日本法人を率いる佐賀氏に、コロナ拡大後のZoomの利用状況と支持された理由、 そしてセキュリティ問題への対応、今後の展開までを聞いた。


――以前から急成長を続けてきたZoomですが、今回のコロナ危機を受けて、まったく別のフェーズに入ったようにも見えます。まずは最近のZoomの利用状況について教えていただけますか。

佐賀 グローバルでの1日あたりの会議参加者数は、昨年12月には1日1000万人でした。それが今年1月に1100万人となって「増えたな」と思っていたのですが、3月に入ると一気に2億人へ増え、さらに4月には3億人になりました。日本のユーザー数も同様に、昨年12月と比べると20倍以上に伸びています。

――劇的な増え方ですが、有料ユーザー数も同じように増えているのでしょうか。

佐賀 無料ユーザーほどではありませんが、有料ユーザーも増えています。最初に昨年までの状況を説明しますと、国内では有料ユーザーの新規獲得数は毎年倍増しており、昨年12月時点の有料ユーザー数は10ライセンス以上が3500社、10ライセンス以下を含めると2万社以上でした。

現在の導入社数はまだ公表していませんが、毎月の新規有料ユーザー数は以前の10倍以上になっています。

――コロナ危機下の人々の仕事や生活を支える社会インフラとしてWeb会議の利用が激増した今、Zoomの名前もWeb会議の代名詞として広く知られるところになりました。

その提供元であるZoom Video Communications社には今どれくらいの従業員がいるのでしょうか。

佐賀 グローバルで約2800名の従業員が働いています。日本法人が設立されたのは昨年7月で、4月末現在の従業員数は36名です。

――Zoom Video Communications社は、Webexの開発に初期から携わったエンジニアで、シスコ退社時はWebexのエンジニアリング担当バイスプレジデントだったエリック・ユアン氏が2011年に設立した会社です。エリック・ユアンCEOはどんな方ですか。

佐賀 「Deliver Happiness」が社是なのですが、エリックはZoomで実施している毎月の全社ミーティングで「社員が幸せでないと、お客様を幸せにできるはずがない。月曜日、朝起きて会社に行きたくないと思うようだったら、仕事はしなくていいから、何が問題なのかしっかり考え、クリアしてから仕事に立ち向かおう」と真剣に言い続けているんですね。だから、みんなが彼に付いていく。また、彼自身が正直でオープンなマインドを持ったエンジニアでコードを全部知っていますから、お客様の声を聞いて、すぐに製品に反映します。そんなカルチャーの会社です。

Zoom Japan 佐賀カントリーゼネラルマネージャー

競合とは基本デザインが違う――Zoomがこれだけ選ばれている理由はどこにあると自己分析していますか。

佐賀 つながりやすく、切れづらいという基本性能が圧倒的に違っていると思います。これまでのWeb会議とは、世界観が違うんですよね。

従来のWeb会議は、4人くらいの顔を表示するとカクカクして使い物になりませんでした。そのため「ビデオを閉じてPowerPointとにらめっこして話しましょう」となっていたわけです。しかし、Zoomはみんなの顔を見ながらでも全然スムーズに動きます。

――高い基本性能の裏には、競合他社にはない仕掛けが何かあるのですか。

佐賀 エリックがかつて開発したものもそうですが、競合他社のWeb会議は、20年以上前にデザインされているのですね。基本的にはクライアントサーバーモデルで、ビデオコーデックなどの重たい処理はサーバー側で行い、クライアント側はなるべくデータを送信するだけというデザインになっています。そのため、ネットワークを流れるデータ量がものすごく多くなりますし、サーバーの処理能力がボトルネックになります。

これに対して、9年前にデザインを始めたZoomは、iPhoneの世界です。モバイルクラウドの環境をベースにデザインされています。

分かりやすく言うと、例えばビデオコーデックは端末側で行います。スマホのCPU処理能力は余っていますから、サーバー側はただ画像サイズを決めるだけなのです。このように、Zoomはなるべく端末側のCPUを使って分散処理するので、ユーザーが増えてもパフォーマンスは落ちません。

一方、クライアントサーバーモデルの場合、ユーザーが増えれば増えるほど、サーバーやネットワークへの負荷が増えていきます。また、クライアントサーバーモデルでは、新機能を追加すればするほど遅くなりますが、Zoomはパフォーマンスにまったく影響を与えないので、新機能をどんどん追加できます。

――ユーザー数がこれだけ急激に伸びているのに、なぜパフォーマンスを維持できているのか不思議でしたが、基本デザインに大きな理由があったのですね。

佐賀 そうです。現在、世界17カ所にあるデータセンターについても、すべて連携しながら分散処理しており、1カ所のデータセンターだけに負荷がかからないデザインになっています。

月刊テレコミュニケーション2020年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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佐賀文宣 (さが・ふみのり)氏

2019年2月にZVC JAPAN(Zoom Japan)入社以前は、2013年からヴイエムウェア でパートナービジネスを統括。2006年から2013年にかけて、シスコシステムズに入社して、同社が買収したWebexの パートナー開拓に携わった。1992年に日本IBMへ入社し、大和研究所にてThinkPad の開発エンジニアとして配属。その後は2006年まで、同社PC部門で日本および アジア太平洋地域担当プロ ダクトマーケティングやパー トナーセールスに携わった。1992年北海道大学工学部 修士課程を修了

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