企業が用いるWANサービスが大きく進化しようとしている。
日本国内の通信事業者でもすでにSDN(Software Defined Networking)やNFV(Network Functions Virtualization)技術を活用したWANサービスの提供が主流となりつつある。さらに、企業の拠点に設置されるCPE(宅内通信機器)を仮想化してセキュリティ等の機能をクラウドから提供するvCPE(仮想CPE)の実用化なども近々見込まれており、SDN/NFVによるWANサービスの革新は通信・ネットワーク業界の新たなトピックとなっている。
そうしたなか、注目を集めているのが「SD-WAN(Software Defined WAN)」と呼ばれる新たなソリューションだ。SDNをWANに適用し、低コストかつ柔軟で拡張性の高い企業ネットワークを実現するものである。
北米ではすでに採用が広がっており、モルガン・スタンレー等の大手金融やGE等の製造、GAP等の小売など幅広い企業が参画してネットワークのオープン化を目指すユーザーコミュニティ「Open Networking User Group(ONUG)」でもSD-WANは注目のキーワードとなっている。2015年春のONUG会合では、世界で3500店舗を展開するGAPがSD-WANの採用を発表した。グローバルに張り巡らせた拠点間網をSD-WANで変革しようとする同社の取り組みは大きな注目を集めた。
SD-WANが期待される理由は、WANの構築・管理を企業ユーザー自身が主導権を持って行えるようになるという点にある。
これまで企業の拠点間網は専用線やIP-VPN、広域イーサネットが中心だった。その管理は提供側の通信事業者が担い、高度な専門知識を持った技術者が構築・運用を行ってきた。SD-WANはこの技術的な難しさを隠蔽し、回線選択の幅を広げ、極論すれば誰でもネットワークを扱えるようにすることを目的としている。
つまり、ビジネス上の要件に応じて、専門家でもなくても誰でも求めるネットワークを作り、要件が変わればまた作り直すことができるようになるのだ。ITの世界では、テクノロジーの専門家でなくてもITを使いこなすことができるようになる「ITの民主化」の時代が到来しつつあるが、ネットワークの世界でも同じような変化が起こる可能性があるのだ。