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「LTEだけでは不十分」――ノキアシーメンスがトラフィック対策のための新アーキテクチャ「Liquid Radio」をアピール

文◎藤井宏治(IT通信ジャーナリスト) 2011.06.22

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ノキア シーメンス ネットワークス
事業戦略統括の小久保卓氏

モトローラの無線インフラ部門買収で体制の大幅強化を図ったノキア シーメンス ネットワークスが事業戦略説明会を開催。「LTEだけでは投資効率の向上は難しい」と、同社の新アーキテクチャ「Liquid Radio」をアピールした。


ノキア シーメンス ネットワークス(NSN)は2011年6月21日、モトローラの無線インフラ部門の買収が4月末に完了したことを受けて記者説明会を開催した。

NSNはフィンランドのノキアと独シーメンスそれぞれの通信インフラ事業部門が統合して2007年に発足した企業である。世界150カ国、600社以上の通信事業者にネットワーク機器やネットワーク運用サービスなどを提供しており、日本ではソフトバンクの3Gネットワークに基地局装置「Flexi Base Station」(以下Flexi)を納入しているほか、NTTドコモのLTE基地局の調達ベンダー(パナソニックモバイルコミュニケーションズとの協業)にも選定されている。

NSNがモトローラの無線インフラ部門の買収で合意したのは2010年7月のこと。その後、中国ファーウェイから売却への異議申し立てが出されたが、今年4月に和解が成立し、買収が完了した。最終的な買収金額は9億7500万ドル(約800億円)。なお、モトローラ自身は今年1月に携帯端末およびSTB事業のモトローラモビリティと、ネットワークおよびエンタープライズのモトローラソリューションズに分社化しており、NSNが買収したのは正しくはモトローラソリューションズの無線インフラ部門ということになる。買収によって、NSNは顧客基盤を拡大するとともに、製品ポートフォリオに新たにCDMA2000とWiMAXを加え、主力のUMTS(GSM/W-CDMA)・LTE分野でも開発力強化を実現した。日本では20年にわたってモトローラが展開してきたKDDI向けの無線インフラビジネスを継承。2009年にモトローラが受注したKDDIのLTE基地局の供給も契約通りの条件でNSNが手掛けることになる。

 

事業統合により、CDMAとWiMAXが新たなプロダクトポートフォリオとして加わった
事業統合により、CDMA2000とWiMAXが新たな製品ポートフォリオとして加わった


説明会でレクチャーを行ったノキア シーメンス ネットワークス 事業戦略統括の小久保卓氏は「今回の事業統合で、日本市場での事業規模は(通信インフラ分野の)外資ベンダーの中で最大となった。また、現時点でドコモ、KDDI、ソフトバンクの3大オペレーターすべてに基地局を納入しているベンダーは、国内勢を含めてもおそらく当社だけ」と説明した。

さらに小久保氏は国内における事業戦略について「最新の製品・サービスをグローバルベンダーならではのコストで提供する。加えて、先進的で要求水準の高い日本市場で認められる製品・サービスを作り上げ、それを海外に“逆輸出”していくことが我々のミッションだと考えている」と述べたうえで、日本の携帯電話事業者が計画している海外事業についても「ぜひパートナーとしてサポートさせていただきたい」と意欲を見せた。

 

波のように流動的なトラフィック需要に効率的に対応する「Liquid Radio」

説明会では、3月に米ラスベガスで開かれた「CTIA Wireless 2011」でNSNが発表した新たな移動通信ネットワークのアーキテクチャ「Liquid Radio」など最新技術の紹介も行われた。

現在、世界中でLTEの導入が進んでいるが、通信事業者にとっての最大の目的は投資効率の向上だ。LTEの周波数利用効率は3Gの約3倍とされ、トラフィック当たりの投資を大幅に下げられると期待されている。しかし小久保氏によれば、「ただLTEを導入するだけでは、投資効率を上げるのは難しい」とのこと。なぜなら、LTEになり通信速度が向上すれば、ユーザー当たりの月間データ利用量も増大するためだ。例えば2009年末からLTEサービスを提供しているスウェーデンのテリアソネラの場合、3Gドングルの月間データ利用量が5GBなのに対し、LTEドングルでは15GBと3倍になっているという。「スマートフォンにおいても、LTEでトラフィックが3倍、4倍になっていくことは容易に想像できる」

 

テリアソネラではLTEのトラフィックは3倍に。固定回線と同等の月刊データ利用量となっている
テリアソネラではLTEのトラフィックは3倍に。固定回線と同等の月刊データ利用量となっている


そこでNSNが提案するのがLiquid Radioである。移動通信のトラフィックは、日中は都心部、夜間は住宅地が高くなるなど、時間に応じて地理的に大きく変動する。この変化に「液体のように」フレキシブルに対応、ネットワークのキャパシティとカバレッジの投資対効果を最適化しようというのがLiquid Radioのコンセプトである。

Liquid Radioは、(1)ベースバンドプーリング、2)アクティブ・アンテナ・システム、3)ヘテロジニアスネットワークを支えるSON(Self  Organized Network)という3つのソリューションによって実現される。

(1)のベースバンドプーリングは、それぞれの基地局ごとに設置していたベースバンドモジュールを1カ所に集積し、複数の基地局で共用するというソリューションだ。各基地局のトラフィック状況に合わせてセンターにあるベースバンドモジュールを動的に割り当てられるため、リソースの効率利用が実現する。

 

ユーザー分布に応じてベースバンドモジュールのリソースを柔軟に割り当てられるベースバンドプーリング
ユーザー分布に応じてベースバンドモジュールのリソースを柔軟に割り当てられるベースバンドプーリング


(2)のアクティブ・アンテナ・システムは、内部に最大8個の小型RFモジュールを埋め込めるアンテナだ。そのメリットはまず、基地局サイトをより軽量・コンパクトにできること、設置及びメンテナンスの簡素化、フィーダーロスの除去による電気効率の向上など。そして、アクティブ・アンテナに内蔵されたRFモジュールは、個別にチルト角などを変えられるため、電波の指向性を制御できる。このビームフォーミングの機能により、「最大65%のキャパシティ向上が図れる」とのことだ。

さらに、ベースバンドプーリングとアクティブ・アンテナ・システムを組み合わせて導入すれば、基地局ロケーションの設備は「アンテナ」だけというシンプルなものとなり、基地局の工事・運用コストも削減できるという。

 

アクティブ・アンテナ・システムでは、ビームフォーミングによりキャパシティを最大65%向上できるという
アクティブ・アンテナ・システムでは、ビームフォーミングによりキャパシティを最大65%向上できるという



(3)のSONは、基地局設定や隣接基地局間の干渉の最適化などを自動化するソリューションで、3GPPで標準化されているもの。NSNでは、W-CDMA/LTE、TD-LTE、GSM、フェムトセル、Wi-Fiなどの様々なシステムを共存させ、ユーザーがこれらを1つのネットワークとして利用できる「ヘテロジニアスネットワーク」の実現手段としてSONに注力している。商用ネットワークでの採用実績はまだないが、ドイツテレコムのほか、北米、中国、アジアパシフィックなどでトライアルの実績があるそうだ。

 

SONの概要
SONの概要



最後に小久保氏は、通信事業者向けのエネルギーソリューションについても紹介した。これは、商用電源に風力や太陽光などの自然エネルギー、バッテリー、燃料電池などを組み合わせて電力利用の最適化を図るもので、自社製品である「グリーンエネルギーコントローラ」が最適化の肝になっているという。商用電源が不安定なアフリカ、インドなどの発展途上国では当たり前のソリューションとして展開されているほか、ドイツなど環境への意識が高い国でも導入が進んでいるとのこと。小久保氏は「原発事故を機に日本でもこうしたソリューションを提案できる可能性が出てきた」と語った。

 

NSNのエネルギーソリューション
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