ユーティリティ分野を中心に利用されているWi-SUNの最新動向をテーマとしたオンラインイベント「Wi-SUN Open House 2022 Winter in JAPAN」(主催:Wi-SUNアライアンス、日新システムズ)が2022年2月7日に開催された。
Wi-SUNは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発を主導、国内の全電力会社がHEMS機器との接続インターフェース(いわゆるBルート)としてスマートメーターに採用している「日本発」のIoT無線技術だ。
Wi-SUN Open Houseは、その推進組織であるWi-SUNアライアンスが2012年の発足以来、IoTに関心を持つ幅広い層を対象に開催しているもの。アライアンス創設から10年を迎えた節目のイベントとなった2022 Winter in JAPANでは、12のセッションを通じて、Wi-SUNの最新動向が紹介された。
ICチップのコストで6Gと棲み分ける今回のWi-SUN Open Houseは、総務省の「Beyond 5G時代に向けた戦略的な知財・標準化、事業化等促進支援プロジェクト」事業の支援を受けて実施された。
広域ネットワーク仕様の「Wi-SUN FAN」の策定を機に、海外でも導入が加速するWi-SUNの動向はBeyond 5G、いわゆる6Gに向けた日本の知財、標準化戦略上も大きな意味を持つ。
イベントはWi-SUNアライアンスでアンバサダーを務める柏木良夫氏(日新システムズ)の講演「Beyond 5G時代に向けたLPWA応用技術と国際標準化の推進」で幕を開けた。
柏木氏はまずBeyond 5Gについて、「5Gと比べて10倍の高速大容量通信、10分の1の超低遅延によって、今まで現場に行かないとできなかった作業が遠隔で可能になる。高い安全性と信頼性、自律性を持つ“夢のような通信インフラ”だ」と評した。
その上で「Beyond 5G時代、全てのデバイスが5G/Beyond 5Gで接続されるわけではない。末端のセンサーやアクチュエーターなどは、無線ICチップが低コストで低消費電力のLPWAのような自営無線システムが担う。両者の組み合わせにより、多様なニーズに応えていくことになる」と指摘。「国際標準規格であり国内外の複数の有力メーカーがICチップを製造するWi-SUNは、コストや供給力の点で最も有力な選択肢となり得る」と述べた。
さらに柏木氏は、Wi-SUNアライアンスにおける標準化動向を説明。「Wi-SUN FANの最新版となる1.1の認証プログラムが2022年中にスタートする。1.1の特徴は、OFDMに対応したIEEE802.15.4xもサポートし、最大伝送レートが従来の300kbpsから2.4Mbpsへ大幅に高速化することだ。また、低消費電力化により、バッテリー駆動デバイスのサポートも可能になる」とし、「Beyond 5Gが実用化される2030年頃でも安心して使ってもらえるよう、Wi-SUNは進化を続けていく」と強調した。