南極で初のローカル5G、NECネッツエスアイと極地研が昭和基地で実証実験

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所(極地研)とNECネッツエスアイは2022年2月25日、昭和基地のスマート化を目指した産学連携共同研究として、ローカル5Gを活用した移動無線通信システムの実証実験を開始したことを発表した。

2021年12月に第63次南極地域観測隊(以下、63次隊)が昭和基地に到着し、63次越冬隊の準備作業の一環としてローカル5G設備の設置作業を開始。2022年1月末までに設置準備がほぼ完了し、2月の越冬開始にあわせて、南極域では世界初となるローカル5Gシステムの試験運用を開始した。

ローカル5G基地局設備を昭和基地の基本観測棟屋上に設置し、昭和基地がある東オングル島および周辺の海氷上においてローカル5Gシステムによる実証実験を行う。

昭和基地の屋外でローカル5G通信を利用しスマートフォンを操作する観測隊員
昭和基地の屋外でローカル5G通信を利用しスマートフォンを操作する観測隊員

昭和基地周辺でスマートフォンを活用
昭和基地は2004年にインテルサット衛星通信設備が設置されて以降、観測データの常時送信や、有線接続によるインターネット利用が可能となった。基地主要部の屋内ではWi-Fiも使用できる。一方、屋外ではトランシーバーがほぼ唯一の通信手段となっており、今回の実証実験期間中は屋外でもスマートフォン等を用いたローカル5G通信が可能となる。

極地研とNECネッツエスアイは2020年から昭和基地のスマート化に向けた共同研究に取り組んでいる。ローカル5Gにより昭和基地周辺の屋外通信環境を改善。大容量・高速・広範囲のデータ通信環境を構築することで、動画や各種アプリケーションを活用した観測隊運営の効率化や観測隊員の安全性向上を目指す。

昭和基地ローカル5G基地局の想定カバーエリア
昭和基地ローカル5G基地局の想定カバーエリア

基地局からの電波の到達想定範囲は上図表の通りで、越冬中の隊員が主に活動する昭和基地主要部と、北の浦を中心とする海氷上において、ローカル5Gの特徴である広帯域低遅延の回線を活かした映像中継や基地設備の遠隔監視を実施。隊員の安全を向上するとともに、作業負担の軽減をはかるための応用に向けた検討を行うという。

また、ローカル5Gで利用する4.8GHz帯電波が昭和基地での観測に与える影響も評価する。

実証実験期間は2021年12月~2023年1月。ローカル5G、自営BWA、sXGPシステムの構築と電波伝搬試験を実施し、野外からの映像中継試験を行う。

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