あらゆる場所でインターネット環境が求められる昨今、オフィスや商業施設など屋内ではWi-Fiの導入が広く進んでいるが、そのニーズは屋外でも拡大している。それに伴い、屋外向け無線LANソリューションの需要が増加している。
特に引き合いが増えている領域の1つが、DXが進む建設業界だ。作業員がコラボレーションツールを利用したり、データ化された図面を参照したり、あるいは監視カメラの映像を遠隔から確認するなど、建設現場には通信環境が必須になりつつある。
また、キャンプ場やスキー場といった屋外レジャー施設や大規模イベント会場、観光スポットなどでも、来場者にWi-Fiを提供するため、屋外無線LANの導入が進んでいる。
図表1 屋外無線LAN製品位置づけ
屋外でWi-Fiを使うには屋外無線LANを実現する最も手軽かつポピュラーな手段は当然、Wi-Fiである。オフィスや家庭で使い慣れたWi-Fiだが、屋外で使用するにあたってはいくつか注意点がある。
まずは当たり前だが、屋外対応のアクセスポイント(AP)を選ぶことだ。雨風や雪、直射日光などにさらされるため、通常の屋内向けAPでは耐えられない。高い防水・防塵性能と耐温度性能を持つ屋外仕様のAPを選ぶ必要がある。あるいは屋内向けAPを防水・防塵加工がされた専用ケースに収納して使用することも可能だ。
周波数についても注意が必要だ。Wi-Fiの周波数には2.4GHzと5GHz帯があり、さらに5GHz帯は5.2GHz、5.3GHz、5.6GHzの3つに分けられるが、このうち屋外で利用可能なのは2.4GHz、5.2GHz、5.6GHzだけである。さらに5.2GHzは①人工衛星に影響を与えない(上空側へ強い電波が出ない)工夫が施された専用機器を利用する、②AP及び中継器については、事前に総合通信局に「登録局」の手続が必要、③気象レーダーに影響を与えない場所でのみ利用可能という3つの条件付きとなる。
また5.6GHzは、同周波数を使う気象レーダーと干渉した際は最大で1分間無線LAN側の通信を止めなければならない。監視カメラなど、少しの通信断でも業務に支障が出る用途であれば、冗長化機能を持つ高信頼のAPを選ぶといいだろう。
図表2 拠点間無線接続製品 周波数ごとの特長
使用周波数帯 | 4.9~5GHz | 5.18~5.7GHz | 57~66GHz | 71~76、 81~86GHz |
|
信頼性 | 安定性 | 干渉少ない 長距離接続可能 |
干渉あり 気象レーダー Wi-Fi[W56] |
干渉少ない チャネル豊富 降雨/降雪の 影響あり |
干渉少ない チャネル豊富 降雨/降雪の 影響あり |
機能性 | 伝送速度(参考) | 250Mbps (1対1) 250Mbp(s1対N) |
300Mbps | 1Gbps | 10Gbps |
伝送距離(参考) | 最長50km(1対1) 最長20km(1対N) |
1~2km | 最長1km | 最長3km | |
マルチポイント接続 | 対応 | 対応 | 対応 | 非対応 | |
無線局免許 | 不要 | 不要 |
不要 | 不要 | |
無線局登録 | 登録必要 | 不要 | 不要 | 登録必要 | |
主な対応ベンダー | RADWIN | PicoCELA | Siklu EtherHaul- 600TX MultiHaul |
Siklu EtherHaul- 8010FX |
出典:エイチ・シー・ネットワークス
屋外の場合、電源や大元のインターネット回線をどこから引いてくるかという問題もある。
山間部の工事現場など、電源がない場所ではバッテリーを用意する必要がある。こうした場合、バッテリー交換や充電の頻度を下げるため、消費電力が大切な要件の1つになる。
大元のインターネット回線については、光ファイバー等の固定ブロードバンドサービスが利用可能で、APまでLANケーブルを敷設できる環境であれば問題ないが、そうでなければLTEルーターを使い、キャリアのLTE回線を利用するのが最も手っ取り早い方法となる。ハイテクインターの「Wi-Fi環境構築ソリューション」、PicoCELAの「PicoHUB station」など、LTEルーターと屋外用APをセットにするなど、工事現場やイベント会場などで迅速に屋外無線LAN環境を構築できるソリューションも出回っている。セルラーネットワークを用いない方法については後述する。
PicoCELAの「PicoHUB station」。アクセスポイント、バッテリー、LTEルーターが入っている(画像提供:PicoCELA)
APの選定にあたっては、1台でどのくらいのエリアをカバーできるかも重要なポイントだ。一般的な屋内向けAPの場合、1台でカバーできる範囲は半径数m~数十m程度だが、屋外向けはエリアカバー力を強化したモデルも多い。例えばハイテクインターが提供する屋外用AP/ブリッジ「E500 Wi-Fi AP」は、1台で半径300m範囲を360°カバーできる。「設置台数を減らせ、結果的にコストも抑えられる点が、一番喜ばれている」と同社 営業部 部長の森池信也氏は話す。
不要 |
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