通信事業者が“定額制”から抜け出す方法――HPが発表したその具体策「HP SNAP」とは?

データトラフィックが激増するなか、“パケット定額モデル”からの転換が急務になっている通信事業者。日本HPは、通信事業者が定額モデルから抜け出すためのソリューションを発表した。

「AT&Tがパケット定額制を辞めたが、我々は今後、パケット定額制から利用度に応じた課金へと移行していくと信じている」

日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2010年6月30日、通信事業者向けソリューションに関する記者説明会を開催した。その席上、HP コミュニケーション・メディアソリューション バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのアーワン・メナード氏は、このような見通しを述べた。

固定・移動を問わず、通信事業者を今、最も悩ませている問題といえば、データトラフィックの急増だ。スマートフォンや動画サービスの普及などを背景に、データトラフィックは急激に増え続けている。その結果、ネットワークへのさらなる投資を迫られているが、パケット定額制が主流の現状では、いくら投資をしても収益は増えない。通信事業者は“定額モデル”からの転換を図る必要に直面しているのだ。

日本HPがこの日発表した「HP Subscriber Network and Application Policy」(HP SNAP)は、“定額モデル”から抜け出すためのソリューションである。

日本HP
(左から)HP コミュニケーション・メディアソリューション バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのアーワン・メナード氏、日本HP通信・メディアソリューションズ統括本部シニアエグゼクティブコンサルタントの伊藤亮三氏、同エグゼクティブコンサルタントの丹羽正一郎氏

パケット定額に変わる新しい料金プランとは?

HP SNAPは、利用中のアプリケーションや帯域幅、そのユーザーのプロファイルや使用量などに応じた課金等をリアルタイムに制御できる、ポリシー管理ソリューションだ。ユーザーごとのポリシールールをリアルタイムに制御することで、従来にない「新しい料金サービス、通信サービスの提供が可能になる」と日本HP 通信・メディアソリューションズ統括本部シニアエグゼクティブコンサルタントは説明した。例えば、次のようなサービスだ。

定額プランに加入していないが、ある動画サービスを今すぐに見たいというユーザーに、1日限定の定額プランを提供する。追加料金を払うことで、そのときだけレスポンスが落ちないように帯域を確保する。プライバシーを考慮しつつ、個人プロファイルにあわせたサービスをプロモーションする。また、特定のユーザーやアプリケーションの帯域を制御することもできる。

伊藤氏は、現在のデータ通信サービスは定額制にしても従量制にしても、パケットベースの課金が基本となっているとしたうえで、「現状、どこのモバイル事業者においても、数%のユーザーが8~9割の帯域を使っている。こうしたなか、快適なネットワークを提供するためには、設備をどんどん追加しなければならないが、これは一握りのユーザーのためにネットワークに投資するということだ。そのコストは回りまわって、すべてのユーザーの料金に上乗せされることになる」と指摘。

特定のユーザーやアプリケーションをリアルタイムに識別可能なHP SNAPの導入によって、パケット定額といった横並びの料金モデルではなく、提供するサービス自体やそのユーザーの嗜好に合った納得感のある料金プランを提供することは、一部のヘビーユーザーを除いた多くの一般ユーザーにとってメリットがあるとした。

ただその一方で伊藤氏は、AT&Tや英O2など“定額モデル”からの転換がすでに始まっている海外とは異なり、日本の場合、既存サービスについては当面、従来のパケット定額が継続するという見方を示した。だが、「定額制から従量制に移行したいとは、固定・移動の事業者とも考えている」ことから、HP SNAPが実現する新しい料金サービス、通信サービスについて今からアピールしていきたいという。

HP SNAP
HP SNAPでは、ユーザーやアプリケーション単位での帯域制御、時間帯や曜日指定での利用制限、日/週/月単位での利用制限、料金に応じた帯域幅、個人のプロファイルに応じたサービスのプロモーションなどが実現できる

OSSの統合ソリューションも強化

この日の説明会では、HP NGOSS拡張ソリューションとHP SCSについての発表も行われた。

通信事業者のOSS(Operation Support System;運用支援システム)は、これまでネットワークごと、サービスごと、事業部ごとなどに別々に構築されてきた。しかし、顧客満足度の向上や新サービスの迅速な展開、運用コストの低減などを図っていくうえで、このようなサイロ型にバラバラに構築されたシステムは大きな障害となっている。

HP NGOSS拡張ソリューションは、通信事業者向けのOSSのうち、フルフィルメント(サービスの受付、開通業務)とアシュアランス(サービスの品質保証)を対象としたもので、サイロ化したシステムの統合が可能になるという。さらに今回、インベントリ管理やサービス管理などの製品が新たに追加され、「フルフィルメントとアシュアランスの領域のほぼすべてをカバーするラインナップになった」(通信・メディアソリューションズ統括本部エグゼクティブコンサルタントの丹羽正一郎氏)とのことだ。

また、HP SCSは、通信事業者向けのソリューションコンサルティングサービス。サイロ型で作られたOSSを統合していくうえでは、単に製品を提供するだけでなく、コンサルティングが非常に重要になる。丹羽氏は、日本においては、既存の電話網からNGNへの移行と、FMC(固定網と移動網の融合)の2つのポイントから今後、OSS統合の必要性が高まるとし、HP SCSでそのニーズに応えていくと語った。

HP SCSは、通信事業者のニーズとビジネス戦略を実行可能で管理指標を持つソリューションに変換するという
HP SCSは、通信事業者のニーズとビジネス戦略を実行可能で管理指標を持つソリューションに変換するという

関連リンク

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。