LPWA(Low Power Wide Area)には、解決しなければならない課題がまだまだある――。
新横浜で10月25日に開催された「第2回 ZETA Alliance Day 2018」で、理事企業の1社であるテクサー 代表取締役の朱強氏はそう切り出した。LTEや3G等の従来型無線通信に比べて通信費が安く省電力なことから注目が集まるLPWA。しかし、それでも「モジュール単価はまだ高く、(駆動期間を長くするために)電池も大きいのでデバイスが作りにくいという声も多い。通信規格そのものも、単方向しか使えないものがあったり、制約が多いのが今のLPWAだ」と指摘する。
確かに、低価格家電や日常品にまで通信機能が備わるような“マッシブIoT”の世界を本当に実現しようとすれば、LPWAにもさらなる進化が求められよう。
テクサー 代表取締役 朱強氏
紙の電池で通信モジュールそんな制約を取り払う次世代のLPWA、朱氏が言う「LPWA 2.0」を実現しようとする取り組みが、ZETAを生んだ英国ケンブリッジで始まった。
ZETAを開発したZiFiSense社が、先進的な電池技術を持つZinergy UK社と開発した通信モジュール「ZETag(ゼタグ)」だ。電池を含めて厚さはわずか3mm。「量産化すれば価格は1個60円程度」(朱氏)という。
封筒の開閉部に貼り付けられているのが、ZiFiSenceとZinergy UKが開発した「ZETag」。
印刷電池技術を使い、非常にローコストな通信モジュールを実現した。
封筒の右にあるのは、ZETAでビーコン信号を送信する新デバイス
想定される用途は“使い捨て”型のIoTだ。
例えば上写真のように、重要書類を送る封筒にZETagと開閉センサーをつけて、開封した際に信号を送る。電子メールには開封確認の機能があるが、リアルな配達物でも人手を介さずに同じことができるわけだ。式典の招待状や契約書、さらに食品・薬品の配達など利用シーンは幅広い。
これを可能にしたのが、Zinergy UKの「プリンテッドバッテリー(印刷電池)」技術だ。紙やフィルム等に亜鉛物質を印刷して薄く軽いバッテリーを作る技術である。電池容量は小さいが、圧倒的低コストかつ軽量な通信モジュールを作ることが可能だ。バッテリー部分のコストは「単価10円を切る。だから使い捨てができる」(朱氏)。
ZiFiSenseはこのほか、GPS情報の取得・送信が可能なビーコンも開発(写真右)。こちらは車両や宅配バイク、配達用のケース等に取り付けて位置情報をトレースする物流向けサービスに使う計画だ。
ZiFiSenseは、ZETAのネットワークを構築している中国・厦門で、ZETagの通信実験も実施済みだ。なお、中国では470MHz帯を使用し、日本国内では920MHz帯を用いる。
実験の結果、平均3~5km範囲で通信が行え、かつ、時速30km程度で走行する自動車からの受信にも成功したという。「革新的な電池技術とZETAの組み合わせで、新たなアプリケーションを作っていきたい」と朱氏は力を込めた。