Sigfoxが「100万回線」を突破――KCCSが開業1周年イベント

京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は、2018年3月16日、Sigfoxのサービス開始1周年を記念し、SigfoxのパートナーやIoTに関心の高い企業などを対象にイベント「KCCS IoT Conference 2018」を都内で開催した。開業1年でSigfoxは何を実現したのか――。

カンファレンスの冒頭、挨拶に立ったKCCSの黒瀬善仁社長がまず強調したのは、Sigfoxのインフラ整備が急ピッチで進んでいる点だった。黒瀬氏は「主要都市のエリア展開をほぼ完了し、人口カバー率は50%を超えた」と述べ、さらに「ニーズのあるところには、それぞれ個別に展開を進めている」と話した。

KCCSは2019年3月末までに人口カバー率85%、2020年末には99%のエリアを構築する計画を発表している。「来年度分はすでに建設会社に順次発注をかけており、実際にサービスとして使えるエリアが、順調に広がっていきつつある」と黒瀬氏は自信を見せた。

もう1つ強調したのが、「Sigfoxを用いた様々なサービスがすでに商用ベースで展開され始めている」点だ。その大きな要因の1つに、「KCCSは回線提供に集中し、サービス展開そのものはパートナーに委ねている」戦略があるという。

「現在パートナーは266社にまで広がり、KCCSもデバイスとアプリケーションのマッチングなどを促進する意味で定期的に交流会を実施するなどの支援を行っている。これらの会社の多くが、1年以内のサービス開始を目指して開発を進めている」というのだ。「Sigfoxを用いた多くのサービスが今現在、開発、実証実験を経て、実用化のレベルに入っており、今まさにこれらが花開く“ティッピングポイント”を迎えつつある」

こうした動きに伴い、Sigfoxの回線数も今年に入ってから急増しており、「2月に100万回線を突破した」と黒瀬氏は明かした。自動検針などのユーティリティ系のビジネスの立ち上がりと、幅広い分野でサービス開発が進展していることが寄与しているという。

100万回線突破をアピールするKCCSの黒瀬社長
100万回線突破をアピールするKCCSの黒瀬社長

1000以上のビジネスがSigfoxの上で走っているカンファレンスには、海外からのゲストも参加した。まず、Sigfox社の創業者でCEOを務めるルドビク・ル・モアン(Ludovic Le Moan)氏が演壇に立った。ル・モアン氏は、「すべてのモノを結びつけたかった」とSigfoxを立ち上げた理由を語ったうえで、「現在45カ国でビジネスを展開し、8億の人口をカバーしている。2018年中には60カ国、10億人をカバーし、600万のデバイスがSigfoxにつながる」と説明した。

2021年を目途に、衛星を用いて地球全体をSigfoxでカバーする構想を進めているともル・モアン氏は述べた。すでにバックホール回線として衛星通信を使っているが、さらに「海上や砂漠のデバイスから送信したメッセージを衛星で直接キャッチする」という。「デバイスの価格や消費電力は、現在のSigfoxの水準を守っていく」とのことだ。

また、Sigfoxを活用して電動スクーターのメンテナンスを行っている独ボッシュなどの事例も紹介。「すでに1000以上のビジネスがSigfoxの上で走っている」と強調した。

続いて、オーストラリア、ニュージーランド、香港でSigfoxネットワークを展開するThinxtra社、そしてシンガポールと台湾をエリアとするUnaBiz社の海外Sigfoxオペレーター2社のCEOも登壇。各国のSigfoxのビジネス事例を紹介したうえで、「Sigfoxの魅力は市場が世界に開かれていること。日本で成功したサービスやビジネスを一緒に展開していこう」と呼びかけた。

カンファレンスの後半は、パートナー企業がそれぞれのソリューションや具体的なビジネス事例を説明した。

ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏は、KCCSと展開しているレンタルSigfox基地局などのSigfox関連サービスを紹介。「Sigfoxは、他の無線と比べてもモジュールコストや消費電力が低い。消費財、コモディティで、どんどん普及していくと考えている」と語った。NEC サービス・テクノロジー本部 シニアエキスパートの羽部康博氏は、「Sigfoxについて一番言いたいのは商用で使えること」とし、同社が提供するSigfoxを活用したLPガスの配送業務効率化ソリューションなどについて説明した。

ウィルポートの秋山亮介氏は、Sigfoxで荷物の有無などを管理する宅配ボックス「まいどうもポスト」を紹介。双日 海外業務部プロジェクト推進課(IoT推進) 特命専門課長の佐藤渉氏とアイ・サイナップ 代表取締役社長の江藤潔氏は、両社が共同展開している防犯ブザータイプやカードタイプの小型GPSトラッカーをアピールした。

ゼロスペック 代表取締役社長の多田満朗氏は、石狩振興局などと実施するSigfoxを活用した“灯油難民”防止の取り組みについて語った。灯油タンクの残量をSigfoxで可視化する。オプテックス 代表取締役社長の上村透氏は、ザイマックス等と展開するIoT看板センサーによる点検・保守・見守りサービスを紹介。同社が年間約300万台出荷しているセキュリティ用センサーの「Sigfox化を進めている」とも明かした。

「KCCS IoT Conference 2018」で講演したKCCS、Sigfox社、海外オペレーター、パートナー各社
「KCCS IoT Conference 2018」に登壇したKCCS、Sigfox社、
海外オペレーター、パートナー企業の講演者たち

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