「IoTに取り組むお客様は、4つの共通の課題を抱えている」――。
シスコシステムズでバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー(IoTクラウド事業担当)を務めるジャハンギール・モハメッド氏はそう語る。
シスコシステムズ、バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー(IoTクラウド事業担当)の
ジャハンギール・モハメッド氏(左)と、インダストリープロダクトグループ ゼネラルマネージャーの
ブライアン・タンゼン氏
4つの課題とは、(1)多様なデバイスを接続するための通信・ネットワークとセキュリティ管理が複雑なこと、(2)モノからのデータ取得の困難さ、(3)データを適切なタイミングで適切なアプリに移動させる手段がないこと、(4)データのプライバシー、セキュリティを管理するソフトウェアがないこと、だという。
今回シスコが発表した「Cisco Kinetic」は、これらをすべて解決する機能を備えていると同氏は語った。
Kineticのベースとなるのは、シスコが昨年買収したJasper TechnologiesのIoTプラットフォームだ。NTTドコモをはじめとする世界中の通信キャリアの携帯電話ネットワークに対応しており、Jasperの設立者でもあるモハメッド氏によれば「世界中の1万4000社に対してアクセスをサポートしている」。マルチキャリア対応を特徴とするこのIoTプラットフォームにシスコの技術を加えることで、Kineticでは携帯電話網だけでなくWi-FiやLoRa、有線ネットワークなどの各種のネットワークを統合的に管理できるという。
これによって先の(1)の課題を解決。さらに、「分散型ソフトウェアであるKinetic」によって、(2)~(4)の課題を解消するとモハメッド氏は説明した。
Cisco Kineticプラットフォームの機能と使用例
Kineticは、ゲートウェイやスイッチ、無線LANアクセスポイントなどのネットワーク機器、そしてプライベートクラウドやパブリッククラウド等に分散配置されるソフトウェアであり、通信の管理やデバイス、データの管理を行う複数のモジュール群から構成される。各所に分散配備されるKineticが互いに通信し合うことで、セキュアかつ効率的なデータの取得・送受信が行えるようになるという。
例えば、遠隔地にあるIoTゲートウェイの設定をリモートで行ったり、データの取得・送受信のルールを設定したり、データ送信先のアプリケーションを変更したりといったことが行える。ゲートウェイやルーター等のネットワークノードでアプリケーション処理を行う、いわゆるエッジコンピューティング/フォグコンピューティングを活用する場合に、そのアプリケーションの配信・更新も可能だ。また、SIMの開通・休止、データの可視化機能も備える。
なお、モハメッド氏によれば、Cisco Kineticとパブリッククラウド間はAPIを介してデータのやり取りを行うため、「AWSでもAzureでも、IBM Watsonでも、どこにアプリケーションがあってもよい。様々なパートナーのアプリをつなげられる」という。