5G(第5世代移動通信システム)は、LTE/LTE-Advancedの次の世代にあたるモバイルネットワークだ。エリクソンが発行した最新の調査レポート「Ericsson Mobility Report June 2017」によれば、2022年には5Gの人口カバー率は15%になる見込みだという。
エリクソン・ジャパン CTO 藤岡雅宣氏 |
黄色のグラフが5Gのカバレッジ。LTEに関しては、2022年には80%以上のカバレッジになると見込まれている |
日本では2020年の商用化に向けて5Gの実証実験が進められているが、実は5Gの新しい無線方式(NR:New Radio)の標準化はまだ完了していない。今後の予定としては、2017年末までにNSA(Non-Standalone)、2018年半ばにSA(Standalone)の標準化が完了する見通しだ。
5G標準化と商用導入のロードマップ。商用サービスの線が赤色の中国は、SA(Standalone)で5Gを展開する予定 |
では、そのNSAとSAはどういうものか。エリクソン・ジャパンCTOの藤岡氏は次のように説明する。「NSAはLTEの広い海の中にNRの島ができるイメージで、制御信号はLTE、データ送信はNRを利用する。SAは制御信号もデータもNRで送信する」。NSAはLTEの存在を前提とするのに対し、SAは5GのNRだけで運用できる方式だ。
5Gの無線アクセス。NSA(Non-Standalone)はLTEと5GのNRが相互連携する |
中国のSAはOption2。NSAには様々な接続形態があるが日本はOption3 |
NSAを採用する国は、商用化の時期が早い順に米国、韓国、日本など。米国はFTTH(Fiber To The Home)の代替を目的に、2017年末にもFWA(Fixed Wireless Access:固定無線アクセス)のために5Gを早期導入する見込みだ。FWAは、屋外の固定された機器間で広帯域通信を実現するもので、通信事業者の基地局と加入者宅を結んで高速なデータ通信サービスを提供する。国土が広く、日本ほどブロードバンドが普及してない米国では、FWAのニーズは高い。
他方、LTEに依存せず、5GのNRだけで動くSAを採用するのは中国だ。藤岡氏は、「チャイナモバイル(中国移動通信)の戦略としては、5Gに関して世界をリードしたいようだ。その背景には、様々なインダストリーで5Gを使おうという中国政府の考えがある」と説明。チャイナモバイルは250万の基地局を持っているそうだが、そのすべてにNRを入れていく方針だという。
なお、日本がSAではなくNSAを採用するのにはいくつか理由があるが、その1つとして5Gで利用する周波数帯が高いことが挙げられる。一般的に、低い周波数帯は回折性が強く広いエリアカバレッジに向くが、高くなればなるほど直進性が強くなりピンポイントでのカバーに向く。
「中国では3.5GHz帯という、高い周波数帯のなかでも低めのところを使い、SAで面的にカバーすることを考えている。しかし日本の場合は、NRに4.5GHz帯や28GHz帯の利用が見込まれており、面的なカバーをNRだけで作るのは難しいためLTEと組み合わせるというのが1つの理由としてある」(藤岡氏)