数あるIoT向け無線通信技術の中でも特に歴史が長く、圧倒的な搭載デバイス数を誇るのがBluetoothだ。そのため、比較的安価かつ迅速にIoTデバイスが調達できて、かつ安定した通信を実現できることが大きなメリットになっている。
このBluetooth搭載デバイスを使ったIoT事例の数々を体感できるのが「Bluetooth SIG パビリオン」だ。そのうち、Bluetooth Low Energy(BLE)ビーコンを使ったものを中心に、いくつか紹介しよう。
通信容量が従来比2倍、通信距離4倍の最新規格「Bluetooth 5」に関する展示もある
電池不要のビーコン端末を出展しているのは、スター精密だ。同社は、人の歩く振動やキャスター/台車の車輪の回転で発電するビーコンを開発。これを使って、人やモノの位置をリアルタイムに検知するソリューションを提供している。
左の車輪を回転させると発電し、ビーコン電波を発信する
その1つ、上の「回転発電キャスタービーコン」は、ショッピングモール等のカートや台車、物流倉庫のカゴ車等に装着するものだ。カートや台車を押すだけで発電してビーコン電波を発信する。電池交換が不要で、メンテナンスフリーで使えるのが利点。既存のキャスターにも取り付けが可能だ。
商業施設や倉庫内にビーコン電波の受信機を設置すれば、どこにどれだけのカート/台車が置かれているのかを遠隔から確認できるようになる。すでに、成田空港で導入検証が行われているという。
同社ではこのほか、入退室管理や会議室利用状況の可視化、在席管理など、一般的なオフィス向けにも、この電池レスビーコンを活用したソリューションを展開する考え。人とモノの動きを可視化したいという多様な用途に応えることができそうだ。
浄水器のIoT化で悪質なユーザーを撃退!
2つめに紹介するのは、海外ですでに商用利用されているアプリックス製Bluetoothモジュール(下写真)の活用例だ。ある浄水器メーカーで、フィルターの使用回数や寿命を遠隔からモニタリングするサービスに使われている。
浄水器のフィルター使用を計測するBluetoothモジュール
この浄水器メーカーは、フィルターの交換を無料で行うことをウリにしていたが、従来は、一部の悪質な利用客に悩まされていたという。まだ交換の必要がないにも関わらず新たなフィルターを要求し、これを転売するといったケースが少なくなかったのだ。
モニタリングアプリの画面。フィルターの残り寿命などが確認できる
そこで、このモジュールを浄水器に設置して、フィルターの残り寿命や、使用した水量などを可視化した。前述の悩みを解消できたことに加え、利用客に対して、どの程度の水を節約できたのかなど詳細な情報を伝えられるようになり、サービス品質も向上したという。