クラウドの次は「エッジヘビー」――分散協調型の機械学習で工場の機械がリアルタイム連携

ファナック、シスコシステムズ、Preferred Networks、ロックウェルオートメーションの4社は、製造業の現場で稼働する機械を自動制御するためのプラットフォーム「FIELD System」を共同開発すると発表した。クラウドより下層の「エッジヘビー」でデータを処理する分散協調型の機械学習により、機械同士のリアルタイム連携を実現するという。

「日本発のIoTソリューションとして、『FIELD System』を世界に発信したい」。FIELD(FANUC Intelligent Edge Link and Drive) Systemを、こうアピールするのはファナック 専務取締役 ロボット事業本部長の稲葉清典氏だ。

FIELD systemは、ファナックとシスコが2016年1月21日に発表した「ZDT(ZeroDowntime)ソリューション」を拡張したプラットフォーム。ZDTは、工場に設置したサーバでロボットの稼働状況などを解析し、ロボットの予防保全を実施したり、不意の製造ライン停止を回避したりすることで、工場のダウンタイムを最小限に抑えるシステムだ。

左からシスコシステムズ代表執行役員社長の鈴木みゆき氏、同社シニアバイスプレジデントIoT兼アプリケーションのローワン・トロロープ氏、ファナック専務取締役ロボット事業本部長の稲葉清典氏、同社代表取締役社長の稲葉善治氏、ロックウェルオートメーション シニアアイスプレジデント兼CTOのスジート・チャンド氏、Preferred Networks代表取締役社長兼最高経営責任者の西川徹氏、同社取締役副社長の岡野原大輔氏

同プラットフォームについて、「4社で協力することで、このような仕組みを世界に先駆けて実現することができた」と述べるのは、Preferred Networks 代表取締役社長 最高経営責任者の西川徹氏だ。

4社とは、ファナック、シスコシステムズ、Preferred Networks、ロックウェルオートメーションのこと。それぞれの役割として、ファナックは工場の生産工程の自動化を図るファクトリーオートメーション(FA)やロボットの技術を、シスコシステムズはプラットフォームのハードウェアやソフトウェアを、Preferred Networksはプラットフォームのソフトウェアと深層学習を、ロックウェルはシステムのトータルインテグレーションを提供する。FIELD Systemは、2016年秋頃の提供を予定している。

エッジからフォグのレイヤーでデータを分析FIELD Systemは、クラウドとエッジの中間層にあたるフォグの層に位置し、製造現場や人工知能・深層学習に必要なアプリケーションをセットで提供する。CNC(コンピュータ数値制御装置)、ロボット、工作機械、各社のセンサなどからデータを受け取り、「ほとんどのデータをクラウドの手前にあるフォグ以下のレイヤーで分析する」(ファナック代表取締役社長の稲葉善治氏)。

FIELD Systemはフォグ上にあり、工場の機械とつながるほか、他工場のFIELD Systemとも連携できる

稲葉(清)氏は、「フォグのエッジ側からエッジ全体を『エッジヘビー』と定義」した上で、「エッジヘビーの領域において機器がネットワークで繋がり、機器から収集されるビッグデータをリアルタイムで処理できるのがFIELD Systemの大きな特徴」と述べる。

製造現場でネットワークを構成するためのに必要なハードウェア性能と、セキュリティを保ったままFIELD Systemからクラウドへデータを送信できる信頼性を見込んで、ファナックはシスコシステムズと協力関係を結んだ。

またファナックは、エッジ側が繋がると、エッジからクラウドまで一気通貫でつなげたいという顧客ニーズを実現するためにロックウェルと、リアルタイムで自律的なアプリケーションを提供するためにPreferred Networksと提携した。

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