――3月のWiMAX 2+の220Mbps化で、UQコミュニケーションズのモバイルデータ通信サービスが国内最速に返り咲くことになります。
野坂 LTEの150Mbpsサービスの登場で当社の110Mbpsは最速ではなくなっていました。クラウド時代を迎え、通信速度に対するお客様のニーズが非常に高くなっています。これに応えることは競争上とても重要です。
今回の高速化はもう1つ大きな意味を持っています。同じ量のデータを短時間で送れる新技術を導入することでシステム容量を拡大できるのです。これによりお客様に快適なサービスを、安価に提供できるようになります。
――具体的に、どの程度容量が拡大されるのですか。
野坂 システム容量は、無線システムがそれぞれの電波(搬送波)を使って実現している最大通信速度の和で考えることができます。
当社では2009年に当時割り当てられた30MHz幅の周波数にWiMAXを導入し最大40Mbpsのサービスを提供してきました。加えて2013年10月に新たに割当を受けた20MHz幅にWiMAX 2+を導入し110Mbpsのサービスを提供しています。
今回、WiMAXで使っていた30MHz幅のうち20MHz幅をWiMAX 2+に切り替えて、110Mbpsのレーンを2車線にします。WiMAXは帯域が3分の1になるので通信速度は13.3Mbpsに下がりますが、全体の容量は110+110+13で233Mbpsとなり、WiMAXだけで運用していた頃の約6倍になります。
UQコミュニケーションズ 代表取締役社長 野坂章雄氏 |
――220Mbpsへの高速化は2波のWiMAX 2+の電波をキャリアアグリゲーション(CA)で束ねることで実現するわけですね。
野坂 少し複雑なのですが、今回の220Mbpsのサービスには2つの方式を用いています。1つがCAで、1月30日発売のモバイルルーター「W01」(ファーウェイ製)がこれに対応します。
UQではまず2月12日に栃木県の真岡市とその周辺を2車線化し、順次全国に広げていこうと考えています。W01が220Mbpsで使えるようになるのは3月のファームウェアのバージョンアップ以降になります。
もう1つが4×4 MIMOを使う方式で、3月上旬発売予定のモバイルルーター「WX01」(NECプラットフォームズ製)が対応します。
4×4MIMOは基地局と端末に4本ずつのアンテナを実装して効率よくデータをやり取りする技術で、WiMAX 2+では20MHz幅の周波数帯1波で220Mbpsのサービスを実現できます。モバイル通信ではUQが世界で初めて4×4 MIMOを商用化することになります。
――技術的なハードルが高いのですか。
野坂 4×4MIMO方式はデバイスの開発が難しいのです。小さな筐体の中に干渉しないように4つのアンテナを配置する必要がありますし、高速フーリエ変換など、4×4MIMOの膨大な演算量を最適化する技術も必須になります。また、1チップにすることで、省電力化を図っています。端末・チップベンダーと共同でこれを実現しました。
一方で基地局側はWiMAX 2+の基地局を当初から4 本のアンテナを実装し4×4MIMOに対応できる形で整備しているのでWX01が発売されればWiMAX 2+エリアのほぼ全域で220Mbpsサービスを利用できます。
当社ではWiMAX 2+の基地局2万局を既に整備していますが、2015年3月末にはこれを2万2000局まで増やしWiMAXと同等のエリアを整備する計画です。