MVNO向けの業務支援サービスを行っているヤマトグループが、新たな取り組みを始めた。
ヤマトグループは、スマートフォンやSIMの輸配送、入出庫・保管、包装、流通加工といった物流に関わる各種の機能を提供し、MVNOの業務を代行・支援するサービスを展開してきている。グループ企業複数社が持つ能力を合わせることで、端末の調達からエンドユーザーへの配送までフルアウトソース対応できるのが強みだ。
一般的な物流業者との最大の違いは、IT/通信機器の設定・キッティング作業を行う技術力を持つこと。ヤマト運輸の情報システム部門を前身とするヤマトシステム開発(YSD)が、SIMの電話番号登録や端末へのID/パスワード設定作業を行い、エンドユーザーが開封後すぐに使える状態にして配送するキッティング支援サービス「テクノ・ロジ」を提供している。
また、MVNOが海外製端末を輸入する際の通関手続や検品も、国際物流の機能を持つヤマトグローバルロジスティクスジャパン(YGL)が代行。日本向けのローカライズ作業(日本語マニュアルの添付や再梱包)も含めて行い、国内配送ネットワークに直結することで、「格安スマホ」や「SIMフリースマホ」の海外調達からエンドユーザーへの納品までの期間とコストを大幅に削減できる。
保証サービスをすべて代行
このように幅広い業務支援サービスを提供しているヤマトグループの「MVNO支援プラットフォーム」(図表)に今回、新たな機能が加わった。配送後のアフターサービス・保証業務をMVNOに代わって行う「ケータイ安心保証サービス」だ。保証設計から故障時の窓口業務(コールセンター)、代替機の保管・発送、故障品の回収やメーカー修理対応まですべて代行する。
図表 ヤマトグループのMVNO支援プラットフォーム[画像をクリックで拡大] |
サービスを提供するのは、家電の修理サポート、延長保証などを手掛けるヤマトマルチメンテナンスソリューションズ(YMM)だ。同社メンテナンスソリューション事業部・延長保証グループの北原恵氏は、「端末販売後のアフターサービスをワンストップで提供できる」と話す。
大手通信キャリアと比べた料金の安さを売りとするMVNOだが、端末の故障時に迅速に対応できるアフターサービス体制がなければ、加入者は安心して利用できない。この体制を構築するのは、MVNOにとって大きな負担となる。
そこで、ヤマトグループが持つ保証・窓口・物流の機能を利用し、アフターサービス体制を低コストかつ短期間に構築できるようにするのがケータイ安心保証サービスの狙いだ。
家電や情報通信機器の保証業務を代行する業者は他にもあるが、「物流や窓口機能も合わせた包括的な保証サービスを代行できるのはヤマトグループだけ」と北原氏。規約・保証書作成等のコンサルティングも行い、最短2週間でアフターサービスを立ち上げることが可能という。また、MVNOから固定費は徴収せず、保証契約1件ごとに課金するため導入しやすいこともメリットだ。
こうした点を評価して、11月26日からMVNOサービス「NifMo」を開始したニフティがYMMのケータイ安心保証サービスを採用。端末故障時に電話一本で交換機を2日以内(一部地域を除く)に届ける「NifMoあんしん保証」を提供している。
もちろん、ヤマトグループならではの物流機能も大きな売りだ。故障受付時には、最短で翌日に代替機を届ける。また、一部地域に限り、最短2時間での代替機配送も対応可能だ。YMMでは、全国100カ所の拠点に情報通信機器等の保守パーツを保管し、依頼に応じて2時間以内に部材を配送する緊急配送サービスを行っており、この仕組みをスマートフォンの故障対応に応用する。
さらに、配送先の変更に柔軟に対応できるのも強みだ。コールセンターと物流の機能が一環したシステムで構築・運用されているため、例えば、大阪に住むユーザーから「出張先の東京のホテルに代替機を届けて欲しい」とコールセンターで受電すれば、その通りの対応ができる。MVNOにとって他社と差を付ける価値の高い保証サービスを提供できる可能性が広がるのだ。