携帯3キャリアのLTEネットワーク戦略(3)ソフトバンクのLTE戦略「AXGP網が“黄金の価値”を発揮するときとは?」

ソフトバンクのインフラ戦略上の強みは、他事業者の買収で取得した周波数帯、基地局スペース、そして技術が活用できること。高密度置局が可能なAXGPの活用はネットワーク品質競争を勝ち抜く鍵となる。

iPhone 5s/5cの販売開始から約1カ月後の2013年10月31日に開かれた第2四半期決算発表会で孫正義社長は、ソフトバンクのスマートフォンの通信品質が大きく向上したことを強くアピールした。

具体例として挙げられたのが、東京・名古屋・大阪でソフトバンクのiPhone 5を利用した場合の平均スループットだ。昨年春から夏にかけて一気に2~3倍となり、9月時点では3社のスマホの中で最も速度が出る状況になっているという。

スループットの大幅な向上を可能にしたのが、ソフトバンク自らの2GHz帯と2013年初頭に買収を完了したイー・アクセスの1.7GHz帯の2つのネットワークを利用して提供している「SoftBank 4G LTE」の運用帯域の拡大だ。2つのLTEの帯域が都心部でいずれも10MHz×2(2車線分)に拡大され、計4車線となったことで混雑が大幅に緩和されたのだ。

最大通信速度も倍の下り75Mbpsに向上したため、このサービスのキャッチフレーズも「ダブルLTE」から「倍速ダブルLTE」に変更された。

図表 ソフトバンクのLTEネットワーク展開(クリックで拡大)
ソフトバンクのLTEネットワーク展開
LTE基地局数は、総務省ホームページの無線局情報検索から得られた2013年11月23日現在の免許数。利用開始前の局も含まれる。同一局が複数の帯域幅で免許を得ている周波数帯などでは帯域幅別局数の合計が実際の局数より多くなるため累計を出していない。この他、1.5GHz帯が3Gで使われている。

基地局ロケーションの相互利用で「理想に近い基地局配置」

孫社長がスループットの向上とともにもう1つ強く訴求したのが、「つながりやすさ」の改善。その根拠として示されたのが、グループのシステム開発会社Agoopが携帯3社の計12万台のスマホにインストールされたアプリで集約したデータによって算出した平均接続率(アプリがサーバーへアクセスを試み、10秒以内に接続できた割合)だ。この数値が春先の95~96%から98%に向上し、他社を上回ったという。

この調査手法に異を唱える向きもあるし、通信品質は刻々と変化しているので、孫社長の「ネットワークでもNo.1になった」という言葉を鵜呑みにはできないが、ソフトバンクの通信品質が以前よりかなり改善されていることは確かだ。

つながりやすさが改善された最大の要因は、ソフトバンクが2012年7月から進めてきたプラチナバンド900MHz帯の3G網のエリア拡大にあると見てよい。スループットの向上には、買収による周波数帯域拡大が大きく寄与している。

加えて、もう1つネットワーク品質の向上に貢献しているのが、同じく買収により大きく拡大した基地局ロケーションだ。

ソフトバンクで無線ネットワークの整備を担当するエリア品質管理部の水口徹也部長は「ソフトバンクの2.1GHz帯LTEと、イー・アクセスの1.7GHz帯は基地局の場所や整備の考え方が違うので、相互補完の形になり接続率が改善しています」と説明する。

ソフトバンクモバイル 水口徹也氏 Wireless City Planning 住吉敏治氏
ソフトバンクモバイル モバイルネットワーク企画本部 無線企画統括部 エリア品質管理部 部長 水口徹也氏 Wireless City Planning 技術統括部 技術企画部 事業戦略課 課長代行 住吉敏治氏

加えてソフトバンク、イー・アクセス、さらにソフトバンクが完全子会社化したPHS事業者のウィルコムの3社が基地局ロケーションを相互に利用し合うことで「理想に近い基地局配置」が可能になったという。

月刊テレコミュニケーション2014年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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