
セールスフォース 通信業界担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのデイビッド・ファン氏
——セールスフォースではかねてより通信事業者向けソリューションとして「Communications Cloud」を提供してきました。MWC26で通信事業者向けのAIエージェント「Agentforce for Communications」を発表しましたが、両者はどういった関係ですか。
ファン 当社ではAIエージェント基盤「Agentforce」を各業界向けに展開しています。そのなかで、通信業界向けに事前構築したAIエージェント群がAgentforce for Communicationsです。一方、従来のCommunications Cloudは、セールスフォース全体のリブランディング方針に沿って「Agentforce Communications」へ名称を変更しました。こちらは通信業界向けのCRM基盤として引き続き提供しています。つまり、Agent force for Communicationsが通信業界特化型のAIエージェントとして、Agentforce Communicationsと連携して機能するという関係です。
——このような製品ラインナップの拡充の背景には、通信業界のどんな課題があるのですか。
ファン 世界的に、業界の成長速度は緩やかです。様々なコストが上昇する一方で、消費者からの期待は高まり、通信事業者は大きなプレッシャーを受けています。
MWCでもある通信事業者から、「コネクティビティを超えていきたい」という話を聞きました。単に回線を提供するだけではなく、IoTサービスやコンピューティングリソース、ストレージなど、より幅広い価値を顧客に提供したいという意図です。しかしこれを実現するうえでの障壁の1つが人材です。新しいサービスを売るためには、その内容を理解し、適切に提案ができる営業担当者が必要ですが、そうした人材には限りがあります。そこで、この制約を補う手段としてAI、特にAIエージェントの活用が始まっています。
30年の知見をAIエージェントに反映
——AIエージェントの活用の現状をどう見ていますか。
ファン 通信事業者のAI活用状況を調査すると、顧客体験の改善から着手するケースが目立ちました。投資回収が早く、差別化にもつながりやすいからです。実際、FAQやナレッジ検索のような比較的シンプルな領域では、独自のAIエージェントを構築し、一定の成果を上げるケースもあります。
しかし、より複雑な営業や契約、運用の業務に広げようとすると、開発が停滞することが少なくありません。理由は2つあります。まず、通信事業者の社内ではデータが複数のシステムやデータレイクに分散しており、それらを統合し、AIが意味を理解できる形に整えなければならないこと。次に、AIは答えを返すだけでなく、業務処理まで完了させなければ価値にならないことです。
——Agentforce for Communicationsは、業務処理の完了まで支援できるということですか。
ファン はい。当社が約30年間、積み上げてきた通信業界の知見がAgentforce for Communicationsに反映されています。アーキテクチャの中でも特に重要なのが「業務のためのシステム(System of work)」です(図表)。このレイヤーは、AIが課金、契約、注文、ネットワーク設定変更といった業務を実行するための基盤であり、AIエージェントがタスクを自律的に実行することも、人とAIエージェントが協力してタスクを進めることもできるように設計されています。
図表 セールスフォースの通信業界向けエージェンティック・エンタープライズ・アーキテクチャー
例えば料金プランの変更では、顧客の利用状況や契約条件を踏まえて最適なプランを提示するだけでは足りません。旧プランの削除、新プランの追加、課金システムやネットワーク側への指示など、複数の処理を確実に実行する必要があります。当社はこうした複雑な業務プロセスまで支援できるAIエージェントを短期間で提供することができます。













