
日本ヒューレット・パッカード HPE Networking事業統括本部 執行役員 事業統括本部長 本田昌和氏
——Juniper Networks(以下、ジュニパー)買収の狙いと、統合の現状を教えてください。
本田 ヒューレット・パッカード エンタープライズ(以下、HPE)は2015年にWi-Fiや企業の拠点内ネットワークに強いAruba Networks(以下、Aruba)を買収し、「HPE Aruba Networking」として事業を展開してきました。一方、ジュニパーは通信事業者のバックボーンネットワークを支える大型ルーターや、データセンター向けの高性能スイッチに強みを持つ会社です。さらにMistを買収し、AI-Native Networkの先駆けとして成長を続けてきました。約140億ドルを投じてこの2つを統合し、Wi-Fiからデータセンタースイッチ、通信事業者向けルーターまでを網羅する事業体が生まれました。
買収完了は2025年7月で、11月1日にジュニパーの社員がHPEに合流しました。8月頃から旧Arubaと旧ジュニパーのメンバーがコミュニケーションを始め、最初のキックオフイベントから、両社ともとても大きな期待を持っていました。このマーケットでトップを狙える事業体ができるのではないかと。
HPEはこれまでも様々な企業買収を通じて事業を拡大してきましたが、今回は統合後のスピードが非常に速い実感があります。12月のHPE独自イベント「HPE Discover Barcelona」では早速、製品統合のロードマップや新製品の発表を行いました。
——国内の営業組織はどのように統合したのですか。
本田 11月から12月の2カ月間は、旧Arubaと旧ジュニパーの2つのチームが並存する形でした。その間に準備を進め、1月1日に営業体制を一本化しました。お客様を訪問する営業が1人でArubaもジュニパーも提案します。国内市場をサービスプロバイダー、エンタープライズ、パブリックセクター、コマーシャルの4セグメントに分けて営業体制を再編しています。今はフィールドの営業メンバーが担当顧客の引き継ぎや、これまで扱っていなかった製品の勉強に慌ただしいですが、もう少し経つと本格的に活動が始まるフェーズです。
Aruba Central・Mistで機能移植
——Arubaとジュニパーで製品や機能が重複するところも少なくありませんが、統合はどう進めますか。例えば、運用管理基盤はArubaのクラウド型管理基盤「Aruba Central」とジュニパーのAI運用基盤「Mist」の2つが併存します。
本田 全てのお客様を取り残さないのが大方針であり、どちらも残します。Mistはクラウド管理型、Aruba Centralはクラウドに加えてオンプレミス運用にも対応できるので、お客様のニーズによって使い分けることが可能です。これらで管理するネットワーク機器も、例えばWi-Fiアクセスポイントについては、どちらからも管理できる「Dual Platform Wi-Fi AP」を今年リリースします。
これまでAruba CentralやMistのどちらかに投資してきたパートナー様には、引き続きそれを活かしつつ、もう一方のプラットフォームの製品も提案できる体制を整えてもらっています。
一般的には、買収後に競合する製品ラインが併存すると、ポートフォリオの統合方針が定まるまでに長い時間がかかりがちです。HPEでは、キャンパスビジネスのグローバル責任者であるスジャイ・ハジェラが1人で全体の戦略を決める体制にしたことで、統合から5カ月でDual Platformの方針をアナウンスできました。
また、Aruba CentralもMistも共に、機能ごとに独立した小さなソフトウェア部品を組み合わせる、マイクロサービスの設計思想で構築されています。そのため、一方のプラットフォームで開発された優れた機能を、部品単位でもう一方に移植しやすいのです。開発組織も統合済みであり、MistのエンジニアがAruba Central上でMist由来のマイクロサービスを検証する作業がすでに進んでいます。
——データセンター向けスイッチやルーターはジュニパーの得意分野です。ここはどのように伸ばしていくのですか。
本田 ジュニパーはシリコン戦略が秀逸です。ルーターのようにミッションクリティカルな性能が求められる製品には自社開発のカスタムチップを、市場ニーズに素早くキャッチアップするデータセンタースイッチにはブロードコム等の汎用チップをと使い分けています。汎用チップを使うことで、急変するAI需要に素早く応えられるのが強みです。実際に800GbEスイッチをいち早く市場投入してシェアを取っていますし、さらに1.6TbEスイッチもリリース予定です。
——これまではAI学習基盤の構築にニーズが集中していました。今後はAI推論の需要が高まることが予想されますが、製品戦略にも影響がありますか。
本田 ルーターの使われ方が大きく変わります。これまではGPU間をつなぐAI学習用クラスターのネットワークが注目されてきました。
しかし今後、様々なエージェントAIがLLM(大規模言語モデル)にアクセスし、AI同士がAPI連携して答えを出す時代になると、AIデータセンターと外部とのトラフィックが爆発的に増えます。このトラフィックは、キャッシュが効かない点でこれまでのトラフィックとは性格が異なり、さらにマルチデータセンター間でアプリケーションが連携してやり取りする世界も広がっていくでしょう。
このトラフィックを捌くためには、データセンターの出入り口のルーターが非常に重要になります。ここはジュニパー独自シリコン「Trio」搭載ルーターが強みを発揮できる領域です。












