「偽・誤情報には事前対策を」 総務省、対策技術支援の成果を発表

フェイクニュースの蔓延が社会問題化するなか、総務省は偽・誤情報への対策技術の開発・実証を支援しているが、その成果を発信するイベントが開かれた。基調講演では東京科学大の笹原教授が“事前予防”の重要性を説明。また、NTT東日本らがフェイク電話音声を検知する技術を紹介するなど、採択技術の展示も行われた。

2026年3月16日、総務省が主催する「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業成果発信イベント」が開催された。

近年、インターネット上では偽・誤情報の流通・拡散が深刻な社会課題となっている。総務省は制度面、リテラシー向上、技術開発の3本柱で対策を進めており、同イベントでは、このうち技術開発分野で支援してきた取り組みの成果が紹介された。

東京科学大笹原教授「偽・誤情報対策にはプレバンキングの考え方が必要」

京科学大学 環境・社会理工学院 教授の笹原和俊氏

基調講演では東京科学大学 環境・社会理工学院 教授の笹原和俊氏が偽・誤情報対策技術の現状と今後の方向性について講演した。笹原氏は、「社会を混乱させる情報には偽情報、誤情報、悪意の情報がある。その周囲には誤解を招く情報が広がっている」と整理した。そのうえで、「真偽だけではなく、悪意の有無も重要だ」と指摘し、事実として正しい情報であっても悪意をもって伝えられれば社会に悪影響を及ぼし得ると述べた。

偽情報、誤情報、悪意の情報が社会を混乱させる

また、偽・誤情報が拡散しやすい背景として、人の関心を引きやすい話題ほど真偽にかかわらず広がりやすいことや、推薦アルゴリズムなどによって似た考え方の情報ばかりが集まる「エコーチェンバー」の問題を挙げた。さらに、生成AIの発展により、偽情報は大量化すると同時に高度化しており、テキストだけでなく画像や動画のディープフェイクも社会的な影響力を強めているとした。

こうした偽・誤情報への対策として、笹原氏は「プレバンキング」の考え方を紹介した。一般的に、拡散後の情報に対してファクトチェックなどで誤りを訂正する手法は「デバンキング」と呼ばれる。これは必要な対策ではあるものの、個別の検証に大きなコストがかかるうえ、一度見た情報の印象を完全に消すことは難しいという課題がある。

事後対策のデバンキングと事前対策のプレバンキングの比較

これに対し、偽・誤情報への接触前に典型的な手口を学ばせるのがプレバンキングだ。笹原氏は、偽・誤情報の生成に共通する手口として、信用をおとしめる行為、感情操作、二極化、なりすまし、陰謀思考、荒らし行為の6つを挙げる「DECIPT(心理的接種理論)」を紹介。こうした手口をゲーム的な手法などで事前に学ぶことで、実際の偽・誤情報やディープフェイクに接した際に見抜く力を高められると説明した。

笹原氏らが取り組んだ実験では、事前に19秒間の対策動画を視聴することで、インスタグラムの投稿に含まれた感情操作を見抜く能力が21%向上し、その効果は5カ月間持続したという。笹原氏は、「デバンキングによる事後的な対応はもちろん必要だが、プレバンキングによる事前予防の考え方を取り入れ、その技術を市民自らが使えるようにならなければ(状況は)なかなか改善しない」と述べ、市民自らがAI技術等も活用しながら対策できるようにしていく必要があると訴えた。

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