ワイヤレスジャパン×WTP 2025地域課題をワイヤレスで解決!高専生がアイデアの実証成果を発表

“未来のワイヤレス技術者”である高専生による「高専ワイヤレステックコンテスト(WiCON)」の成果発表会が今年も開催された。各チームはそれぞれの視点で地域の課題解決につながるアイデアを考え、その実証の成果を披露した。発表会のオンデマンド配信に合わせ、そのうち2チームの成果を紹介する。

「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2025」の会期最終日となる2025年5月30日、「高専ワイヤレステックコンテスト(WiCON) 2024」の成果発表会が開催された。

WiCONは、ワイヤレス人材の育成の一環として、地域課題の解決につながる無線通信を活用したアイデアや無線技術・システムの提案を全国の高等専門学校(高専)生から募るコンテストで、情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が主催、総務省が共催する。高専生はチームを結成し、「ワイヤレス利活用部門」と「ワイヤレス基礎技術部門」のいずれかにエントリー。採択されたチームには最大150万円が支給され、約9カ月間にわたって技術実証に取り組んだ。

成果発表会には採択チームから選抜された6チームが登壇し、取り組みの背景、開発内容、成果について発表した。本記事ではワイヤレス利活用部門から2チームの発表を取り上げる。

“自作”無線デバイスで高齢者サポート 仙台高専広瀬キャンパス

仙台高等専門学校・広瀬キャンパスの「アシストネクサス」チームは、「シニアでも簡単操作!過疎地でも安心の生活応援システム」について発表した。

急速に進行する少子高齢化には、それぞれの地域に根ざした対策が求められる。特に過疎地域やそれに準ずる地域では、生活に必要な施設や交通手段の不足が高齢者の暮らしに障壁となっている。

こうした課題に対してIT技術での解決が模索されているものの、スマートフォンを所持しない高齢者も多く、有効な手段とするにはハードルがあるのが実情だ。

そこで同チームは、スマートフォンを使わない高齢者を想定した端末「安心サポートノード」を開発。タッチとスワイプだけで直感的に操作できるインターフェースを用いて、デマンドタクシー予約、見守り、端末間のコミュニケーションの3機能を実装した。通信には省電力かつ長距離でデータ通信が可能なLPWAであるLoRaを活用する。

「シニアでも簡単操作!過疎地でも安心の生活応援システム」の全体構成

「シニアでも簡単操作!過疎地でも安心の生活応援システム」の全体構成

同チームは、地域内にLoRaの自営ネットワークを構築したうえで高齢者に端末を貸与し、実証実験を行った。利用に個人情報の入力が不要なこと、端末のサイズ・重さは評価された一方で、操作性には不満の声が上がったという。発表者は「タップだけで操作できるのは便利だが、デマンドタクシーで利用を希望する停留所までの画面遷移が多くなるので電話予約のほうがいいという意見もあった」と反応を紹介した。

得られたフィードバックを踏まえ、今後は見守りとコミュニケーションの2機能に絞った開発を続けるという。「開発者が考える使いやすさはリテラシーが高い人向けになりがち。高齢者の行動パターンに沿ったデザインが必要だ」と改善の方向性も明示した。

同システムを構成するハードウェア。左下の灰色のデバイスが「安心サポートノード」

同システムを構成するハードウェア類。左下の灰色のデバイスが「安心サポートノード」

点字ブロックを“シューズに内蔵” 沖縄高専

沖縄工業高等専門学校の「全力疾走」チームは、「視覚障がい者の自由な移動を支援する次世代ウエアラブルデバイス『わんだらん』」の開発に取り組んだ。

視覚障がい者は点字ブロックを歩行の頼りにするがその敷設率は低く、国土交通省によればバリアフリー化されている「特定道路」は全国の道路のうち0.1%にすぎない。そこで同チームは、点字ブロックのない道路でもブロックを踏む感覚を足裏に伝えるシューズ型デバイスを開発するというユニークなアプローチを考案した。

システム構成は2種類ある。1つは、スマートフォンのカメラとAIで周辺状況を把握し、その情報をBluetoothなどの近距離通信でデバイスに伝える「シンプル形態」。もう1つは、市中に整備されたAIカメラとデバイスが5GやWi-Fiで通信を行う「スマートワイヤレス構想形態」だ。

どちらの方式でも、周辺の情報から安全と判断した場合、シューズの右足底部に内蔵された「点字ブロック伝達機構」を押し上げることで伝える。同様に、危険と察知した場合は左足の機構を押し上げる。機構の回転により、進行方向を示すこともできるという。

シューズ型デバイスに組み込む点字ブロック伝達機構

シューズ型デバイスに組み込む点字ブロック伝達機構

今回の取り組みでは、点字ブロック伝達機構を組み込んだシューズ型デバイスの試作機を開発した。また、映像のAI処理と機構の制御が連携できることも実証した。

今後は機構をシューズに実装し、視覚障がい者に履いてもらい歩行実験を行う計画だ。同時に、安全に歩行できる領域を抽出するスマホアプリの開発や、歩行時の脳波測定を通じた「安心感」の評価など、様々な取り組みを行っていくという。

6月30日まで成果発表会をオンデマンド配信

各チームの発表後にはチームの代表者によるパネルディスカッションも行われた。「プロジェクト立ち上げのヒント」、「プロジェクトを進める上で苦労した点・工夫した点」、「プロジェクトの今後の展望」の3テーマについて、率直な意見を交わした。

パネルディスカッションには6チームの代表者が登壇

パネルディスカッションには6チームの代表者が登壇

成果発表会の模様は、6月30日まで「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2025」公式Webサイトでオンデマンド配信される。地域課題解決に向けた高専生の着眼点と、意欲的な探求の成果をぜひご覧になってほしい。

関連リンク

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。