通信デバイスや無線ソリューションなどを提供するエイビットの5G事業部門からスピンアウトしたマグナ・ワイヤレスは、ローカル5G市場において先頭集団を走り続けている。
エイビット時代の2020年5月に、Sub6帯と5G SA方式をサポートする検証機「AU-500シリーズ」を発売。基地局と端末をセットで提供し、ローカル5Gの検証環境を迅速に構築できる点が、製造業をはじめとする多くの企業・組織から好評を得た。
2021年12月には後継機「AU-650シリーズ」を提供開始。往復遅延10ミリ秒(ms)という低遅延性に加え、多数接続時のシステム性能や、複数基地局を設置した際のハンドオーバー評価が可能になり、従来モデルから大幅に機能が強化された。
超低遅延を実現したAU-700 ジッターレスでTSNをいち早く評価
そして今年4月、新たな検証機「AU-700シリーズ」をリリースした。往復遅延10msというAU-650の低遅延性はそのまま、さらにジッターレス機能を搭載した点がAU-700の特徴だ。
有線ネットワークの世界では、産業用途で求められる低遅延・低ジッター性能を実現するイーサネットの拡張規格「TSN」(Time-Sensitive Networking)がIEEEで策定され、3GPPではTSNと5Gをシームレスに連携させるための仕様拡張が実施された。AU-700では、この“ワイヤレスTSN”が要求する1マイクロ秒(μs)以下のジッター性能を実現している。
マグナ・ワイヤレスは、基地局(AU-700gNB)と端末(AU-700UE)をセットにした「TSNスターターキット」を用意し、「ワイヤレスTSNをいち早く評価したい」「ワイヤレスTSNを研究材料として活用したい」といった企業ニーズに寄り添う。また、ローカル5Gの免許申請に関するサポートも行う。
AU-700シリーズの外観(右が基地局「AU-700gNB」、左が端末「AU-700UE」)。超低遅延性(往復遅延時間10ms以下)とジッタ―レス(遅延時間のゆらぎが1μsec以下)を両立
このAU-700の基盤となるのが、情報通信研究機構(NICT)・大阪大学大学院工学研究科と共同開発した5G半導体チップ「MC-001」だ※。チップ内の無線信号処理を専用ロジック回路とすることで、5G通信の遅延時間を大きく短縮。また、ソフトウェア無線(SDR)技術によって、帯域の優先制御や上下通信の比率変更なども柔軟に行える。2026年中に“量産版”をリリースする計画だ。