――御社は2011年5月に新たな事業ビジョン「ビジョン2015」を策定しました。2015年度のNTTコムグループの営業収益1.5兆円以上を目指すことを柱としたものですが、狙いを教えて下さい。
海野 まず、数値目標をきちんと持とうということです。企業のビジョンやスローガンは、本当に守られたのかどうか分からないまま、曖昧になってしまうケースが多くあります。しかし、それがハッキリしないと、反省もできませんし、次の目標も立てられません。数値目標を掲げれば、守れたかどうかが明確になります。
では、1.5兆円を達成するには何をすればよいかと考えると、「クラウド」と「グローバル」というキーワードが浮かび上がります。基本的に日本市場はシュリンクしていますので、そうしたなかで1.5兆円を達成しようとすれば、現在国内で展開しているビジネスを大きく変えていくか、国外に出て行くかの2つになります。前者がクラウドで、後者がグローバルなのです。
――クラウドについては、東日本大震災が、結果として普及に向けて背中を押した格好になっています。
海野 従来は「コストは安くなるけど安全性はどうか」とセキュリティへの不安が多く、「やはりデータは自分で持っていたほうがいい」というのが多くのお客様の感覚でした。しかし個人的には、セキュリティへの不安は慣れの問題だと思っています。データが手元にある時は、PCの紛失や盗難への不安があり、預けると今度はデータが手元にないことの不安が増大するものです。私はどちらが正しいということではなく、どう慣れるかだと思います。それが今般の大震災を1つのきっかけとして、「データは外に預けたほうがより安全」というように、お客様の感覚が変わってきたと実感しています。