「ローカル5Gのメリットはシステムの安定性。スポーツは撮り直しができないため、この点が何より重要だ」。伊藤忠ケーブルシステム ネットワークソリューション本部 新規事業推進室 新規企画課 課長の磯部久夫氏はこう話す。
伊藤忠ケーブルシステム ネットワークソリューション本部 新規事業推進室 新規企画課 課長 磯部久夫氏
伊藤忠ケーブルシステムは、イスラエル Pixellot社の野球専用AIカメラ「Double Play」とローカル5Gを組み合わせた試合中継ソリューションをCATV事業者向けに販売している。その特徴は、野球中継の自動化を実現できることだ。
Double Playは基本的に2台セットで利用する。球場のバックネット裏にプレー全体を撮影するカメラ、センター側のスタンドに投手・捕手間を撮影するカメラを1台ずつ設置し、通常はセンター側からバックネット側へ映像を伝送する。カメラに搭載されたAIにより映像を自動編集し、リアルタイムで中継できる。AIは野球のルールを学習しており、局面ごとに中心となるプレーを適切に撮影する。
Double Playはバックネット裏(左)、センター側(右)のカメラの映像をプレーに応じてAIが自動で切り替える
(兵庫ブレイバーズ:さわかみ関西独立リーグ2023より引用)
例えば、バッターが打った瞬間に映像をセンター側からバックネット裏のカメラに自動で切り替え、打球の行方や走塁の様子などの映像を届けられる。固定カメラを追加し、スコアボード等を撮影した映像を埋め込むことも可能だ。
ローカル5Gは、カメラ間の映像伝送に用いる。Double Playは4K/25fpsの高精細映像を撮影でき、この大容量データを低遅延で伝送するのにローカル5Gはうってつけだ。また、バックネット裏とセンター間の距離は200メートル程度あるため、出力が大きく電波が安定して遠くまで届くという点でもWi-Fiを上回る。
球場に設置したDouble Play(出典:NTT Sportict プレスリリース)
従来システムでは、野球中継にはスタッフが最低8人は必要だったという。しかし、Double Playでは、専門的技能が必要なカメラ操作と複数台カメラの映像切替はAIが行うため、2人に減らせるという。
しかも、その2人は、試合中は稼働を見守るだけなので、スタッフはアルバイトなど非熟練者でもいい。映像技術者は別の撮影・中継に携わることができるため、CATV事業者は結果として映像コンテンツの拡充を図れる。