関東鉄道、コシダテック、ヤシマキザイ、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)の4社は2023年8月29日、線路内に滞留する物体を高精度かつリアルタイムに検知する「踏切内AI滞留検知システム」を活用した踏切事故の未然防止に向けた実証検証を9月1日より開始すると発表した。
鉄道運転事故の4割を占める踏切事故を防止するために線路内の滞留を検知する踏切支障検知装置が設置されることが一般的だが、自動車など大きな物体の検知に対し、それより小さな物体の検知に課題があるという。
「踏切内AI滞留検知システム」実証実験のイメージ
そこでこのシステムは、踏切付近に取り付けた市販のネットワークカメラの映像を5Gネットワークでdocomo MECに伝送し、VAEや背景差分技術を活用してAIにより解析し、線路内に滞留する物体を大小問わず高精度かつリアルタイムに検知するという(参考記事:NTT Comが開発する「動くIoT」向け新機能 ネットワークエッジの進化支える|BUSINESS NETWORK)。物体を検知すると、施設管理者へアラートを通知する。なおVAEとは変分オートエンコーダ(Variational AutoEncoder)の略で、訓練データの特徴を学習し、似たような画像を作成する生成モデルの一種を指す。
また、取得した映像はリアルタイムにdocomo MECへ伝送し一定期間蓄積するため、遠隔地からの現場確認用カメラとしても活用することが可能としている。
実証実験は関東鉄道常総線の海老原踏切道(茨城県守谷市、守谷駅~新守谷駅間)で、2024年3月31日まで行う。実フィールドで実験することにより、自転車、ベビーカー、車いす、手押し車およびそれらの帯同者といった自動車以外の小さな物体の検出精度の実用性や、障害物検知の検出精度に関する既存の装置との比較を検証するという。
実験結果を踏まえ、線路内に滞留する物体を検知した場合に接近する列車の運転士にアラート通知する機能などのシステム改修を図るという。その後、鉄道各社への同システム導入に向けた提案を行うほか、技術を応用して線路内への鳥獣侵入、ホームからの転落、駅構内の異物などの検知を可能にし、鉄道運行の適切化や駅構内の安全対策に貢献することを目指す。
各社の役割分担は以下の通り。
関東鉄道…同実験のフィールド提供
コシダテック…同システムの開発・提供、同システムを構成するAIの提供
ヤシマキザイ…同システムの関東鉄道への提案
NTT Com…同システムを構成する5Gネットワークおよびdocomo MECの提供