写真:cofotoisme / iStock
6Gは“AIネイティブ”なネットワークになる──。
モバイル業界では今、そんな将来を見据えた技術検討と標準化が進んでいる。「Release 18(R18)で、AIや機械学習(ML)を5Gに組み込もうとする動きが始まっている。6Gも当然、そのアーキテクチャを意識して進めていく」と語るのは、エリクソン・ジャパンCTOの鹿島毅氏だ。
エリクソン・ジャパン CTO 鹿島毅氏
今では通信事業者の多くがネットワークの運用効率化や最適化にAI/MLを活用している。ただし、その取り組みは、エリクソンやノキアらベンダーが独自に開発・提供するソリューションを利用したもので、5Gの標準仕様ではない。そもそも2010年代に原型が作られた5Gは、「AI/MLを使うことを前提にしていないので、得られる恩恵もかなり限定的」とノキアソリューションズ&ネットワークスCTOの柳橋達也氏は話す。
ノキアソリューションズ&ネットワークス CTO 柳橋達也氏
その流れが変わりそうなのが、現在標準化作業中のR18から始まる5G-Advancedだ。ベンダー独自の手法を標準仕様に組み込みながら、AI/MLの活用法と効果を検証。この準備段階を経て、6Gを「AIネイティブなシステム」へと進化させていこうとしている(図表1)。
図表1 AIネイティブシステムとしての6Gへ向けて
AI/MLへの通信事業者の期待は非常に高い。図表2は、エヌビディアが通信業界を対象に行った調査結果の一部だ。AIを「利用していない/利用する予定はない」はわずか5%。65%が「AIは自社の成功にとって重要」と回答した。2023年の投資額も9割超が、前年同額または増額するとしている。
図表2 通信事業者におけるAI活用状況
目的については、「オペレーションの最適化」「コスト削減」が上位だ。7割超が過去1年間で収益増やコスト削減への効果を認めている。また、「顧客エンゲージメントの強化」への活用例もあり、対話型AIの「NVIDIA RIVA」やデジタルアバターを顧客とのやり取りに使う例が出てきているという。