2022年7月2日1時35分、KDDI/auの通信網において発生した大規模通信障害は、コンシューマーだけでなく法人ユーザーにも大きな影響を与えた。約61時間にわたって全国で継続し、KDDIによれば最大26万の法人ユーザー、特に物流、自動車、行政サービス、銀行関連、交通機関などに影響を及ぼしたとされる(図表1)。
図表1 KDDIの障害で影響を受けた主な法人領域
特に決済の場合、通信がないとお金や信用のやりとりができない。現状のビジネスは通信を前提としており、影響が大きかった。
もちろん、モバイルキャリアには再発防止策の徹底に全力で取り組んでほしいが、ユーザー企業の側でもより積極的な対策が必要だ。すなわち、キャリアダイバーシティ、モバイル回線のキャリア冗長化である。
通信障害は完全には防止できないし、ダウンせずともつながりにくい状態に陥ることは、多々ある。DXが進む今後、その影響はいっそう大きくなっていく。
キャリアダイバーシティは、固定系の拠点間ネットワークでは、これまでから一般的に行われてきた。ところが近年は、キャリアダイバーシティが疎かになっている企業が増えているとITRの甲元宏明氏は指摘する。「DX推進や調達する機器の増加などで、情報システム部門の業務が多忙化している。そのため、回線についてはキャリアに全面的に任せているところも少なくない。ユーザー企業側が主導権をもってネットワークの構築運用を推進する必要がある」
こうした企業の場合、当然、モバイル回線についても冗長化は行っていない。ただ、KDDIの大規模障害で、多くの企業の意識が変わった。
「多くの人にとってモバイル網はそうそう止まらないという認識だったが、最近の障害によって、以前よりも1つの回線に依存するリスクは多くの人が認識するようになっている」とIIJの中村真一郎氏は述べる。
IIJ MVNO事業部 副事業部長 中村真一郎氏
モバイルネットワークが企業活動の根幹を担うようになった今、モバイルに関してもキャリアダイバーシティに真剣に向き合う時が訪れたと言えよう。