ワイヤレスジャパン/WTP2022 基調講演レポートインテルが進めるネットワーク仮想化 国内キャリアとの最新動向も

2025年には約50%のデータがエッジで生成され、ネットワークは仮想化していくーーこうしたSDNとエッジ中心の未来を見据え、世界の通信事業者と取り組みを進めているのがインテルだ。「ワイヤレスジャパン/WTP2022」の基調講演で、同社のクラウド・通信事業統括部長の堀田氏は、5G/6G時代に向けたネットワークの最新動向や日本の通信キャリアとの共創事例について解説した。

ネットワーク”全体”の仮想化に注力

インテルはCORE/RANに留まらず、ネットワークを支えるルーターやスイッチの仮想化、オープン化などネットワーク全体の仮想化にも注力している。具体的な取り組みとして挙げたのが、ネットワークOS「SONiC」、共通言語「P4」、オープンソースコミュニティ「Open Network Forum(ONF)」の推進だ。中でもONFについては、メンバー全員をインテルの従業員として迎えたという。

「今、ネットワーク・アプライアンスがどんどん仮想化、ホワイトボックス化に向けて動き出している。アプライアンスからホワイトボックスに移るという世界観は止められないだろう。この流れに乗るためには、開発者含めたエコシステムの確立が必須であり、共通言語でネットワークのソフトウェアを書けるようになることが重要だ」と堀田氏は強調した。

 


インテルのオープン化への取り組み

 

さらにネットワーク関連の取り組みとして、ソフトバンクが開発した「SRv6 MUP」を活用したPoCのデモを、「MWC Barcelona 2022」で披露したことを紹介した。

 


ソフトバンクとは「MWC Barcelona 2022」で
「SRv6 MUP」を活用したデモを披露した

 

 

SRv6 MUPは「Segment Routing IPv6 Mobile User Plane」の略で、標準的なIP伝送路の技術であるSRv6に、MUP(Mobile User Plane)の能力を拡張した技術だ。これにより、SRv6で実装された既存のIP伝送路を構成する汎用チップセットやホワイトボックススイッチなどの汎用型ネットワーク装置で、MECやネットワークスライシングを低コストかつ容易に実現する。MWC Barcelona 2022では、インテルのホワイトボックススイッチと汎用サーバー上で、5G UPFとそのネットワークの先を繋ぐデモを行ったという。

「UPFは東京や大阪などの大きなデータセンターに入っている。ただネットワークスライシングを利用するエンドユーザーは、日本全国にいるので、その方たちがエッジコンピューティングを体験するために毎回東京や大阪までアクセスするのは現実的ではない。こうした新しいプロトコルとユーザープレーンを、最適かつ低コストで送れるソリューションは必須になる」(堀田氏)

 

カーボンニュートラルへの取り組みも

堀田氏は最後に、カーボンニュートラルに向けたインテルとKDDIの協業についても紹介した。KDDIは現在、年間約100万トンのCO2を排出しており、そのうち98%が携帯電話基地局・通信局舎・データセンターで使用する電気に起因。今後、5Gの普及と通信量の増大によってさらなる増加が予測されている。

KDDIは2030年度までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げているが、実現には携帯電話基地局や通信設備などの省電力化が必要だ。そこで2024年度に、インテルと発表したAIを活用しトラフィックに応じて通信用設備のCPUを制御して消費電力を最大20%削減する技術や、液体でIT機器を冷却する液浸冷却装置を導入し、通信局舎やデータセンターのCO2排出量の削減に取り組む。

「インテルもKDDIも、CO2排出削減に向けた活動を加速させている。CSRを果たすため、ネットワークやデータセンターのあり方、CO2削減の方法を色々と議論させていただいているところだ」と堀田氏は話した。

 

 


KDDIと協業し、通信局舎やデータセンターのCO2排出量削減に取り組む

 

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