KDDIが月とのギガ級通信に挑戦 アポロ11号から50年、月との通信計画

国際的に活発化している宇宙開発。世界が頭を悩ませているのが、宇宙と地球の通信である。日本でも月と宇宙を結ぶネットワークの検討が始まっており、KDDIがアーキテクチャ策定に乗り出した。

アポロ11号のニール・アームストロング船長が人類史上初めて月に降り立ったのは1969年のこと。それから50年以上が経過した今、ギリシャ神話のアポロ(アポロン)の双子の妹の名を冠した「アルテミス計画」が進行中だ。

アルテミス計画は、米国およびNASAが主導する国際的な宇宙探査計画。アポロ計画以来の有人月面着陸を2025年に実現することもスコープに含まれている。日本もアルテミス計画に参加しており、日本人宇宙飛行士による初の月面着陸への期待もふくらんでいる。

このように50年以上ぶりに人類が月へ足を踏み入れようとしているなか、月面活動用のインフラ構築に挑み始めた日本の通信事業者がいる。KDDIだ。超小型衛星を開発するベンチャー企業のアークエッジ・スペース等とともに、JAXAの公募型企画競争「『月面活動に向けた測位・通信技術開発』に関する検討」の委託先に選定された。このプロジェクトは、政府が取り組む「宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)の戦略的プロジェクトに位置付けられている(図表1)。

 

図表1 スターダストプログラムのスキーム概要

月面には「ほとんど何もない」同プロジェクトでは、月-地球間の長距離通信システムと月測位衛星システムの2つの技術開発を5年かけて検討する。

無人探査機が降り立ち、活動することはあったが、これまでの月面での活動は極めて限られたものだった。そのため、インフラと呼べるような恒久的な設備も現状、「地球と月の間および月面にはほとんどない」とKDDI 技術統括本部 技術戦略本部 担当部長の市村周一氏は話す。

KDDI 技術統括本部 技術戦略本部 担当部長 市村周一氏
KDDI 技術統括本部 技術戦略本部
担当部長 市村周一氏

しかし、月面での活動を本格化させていくためには、様々なインフラを整備していかなければならない。当然、通信と測位のためのインフラも必要不可欠である。

月と地球を結ぶ通信ネットワークも、無人機を遠隔操作したり、取得した調査データなどの送信のために必須となる。現状は、月面着陸船(ランダー)に大型のアンテナと通信機を搭載し、このランダーと地球の地上局が直接通信しているが、月面探査のたびに通信機を月まで輸送するのは非効率である。「1度に限られた重量しか輸送できない宇宙探査において、ランダー、ローバーなどの各宇宙機に大きな通信機を搭載するのは重荷で、電力などの面でも負担が重い」と市村氏は指摘する。

月面探査用のローバーのイメージ写真(出典:JAXAプレスリリース)
月面探査用のローバーのイメージ写真(出典:JAXAプレスリリース)

ところで、月は公転周期と自転周期が一致していることから、常に地球に同じ面を向けている。今までの月面探査の多くは、地球から見える面の範囲(可視域)で行われていたが、今後は月の南極域や裏側や、クレーター内など非可視域へも活動域を広げていくことが期待されている。その場合、ランダーと地球の直接の通信だけでは限界があるため、データ中継衛星などのインフラで通信環境を確保しなければならない。

測位システムも必要だ。月面活動の中心的な役割は、無人のローバーや探査機などが担うことになるが、「そのためには高精度な地図の作成や、ナビゲーションが欠かせない」(市村氏)からだ。

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