SPECIAL TOPIC見えてきた「シスコのローカル5G」の全貌、企業ニーズに寄り添う3つの要素とは

エンタープライズネットワークと通信事業者インフラの双方で高いシェアを誇るシスコが、「ローカル5G」に本格参入する。間もなく予定されている販売開始に向けて、ソリューション開発と販売体制の整備が進行中だ。企業ネットワークの課題とニーズを知り尽くしたシスコは、どんなアプローチでローカル5Gを推進するのか。

基地局はO-RAN仕様、クラウドから自動でプロビジョニング
Cisco Private 5Gは、シスコが開発する5Gコアネットワークと管理システム、パートナーから提供されるRAN設備で構成される。ローカルサイトには無線基地局とコア機能の一部を設置し、これと、マネージドサービスとして提供される5Gコアを接続する(図表2)。

図表2 シスコのローカル5G導入イメージ
図表3 シスコのローカル5G導入イメージ

ローカルサイトの基地局やRANソフトウェア/サーバー、ネットワーク機器は、「導入・運用を容易にするため、クラウド側から自動でプロビジョニングする」(坪内氏)。ユーザーは無線基地局や端末数に応じて料金を支払うサブスクリプションサービスとしてすべてを利用可能だ。

RAN設備のパートナーは現時点で、AirspanとJMA Wirelessの2社。シスコ製5Gコアとの動作検証を行ったうえで提供する。なお、ラインナップの拡充も予定しており、国内の基地局ベンダーとも交渉中だ。今後、選択肢が増える可能性がある。

Cisco Private 5Gで提供する基地局はすべて、RANのオープン化/マルチベンダー化を推進する「O-RAN Alliance」の仕様に準拠した製品となる。

 
シスコ
サービスプロバイダーアーキテクチャ事業

SPルーティングアーキテクチャー
テクニカルソリューションズアーキテクト
大槻暢朗氏
 

この点でもシスコが強みを発揮できると語るのは、サービスプロバイダーアーキテクチャ事業 SPルーティングアーキテクチャー テクニカルソリューションズアーキテクトの大槻暢朗氏だ。理由は、「マルチベンダーでRANを構成する場合、しっかりとパフォーマンスを出すにはネットワークの設計が重要」だからだ。

 

同氏が特に強調するのは、RUとDU/CUをつなぐフロントホール設計の重要性である。「RANを安く作るためにイーサネットスイッチを使うことができるのが5Gの特徴の1つではあるが、一般的なイーサネットスイッチではRANに必要な要件を満たせない。RANではPTPによる高精度な時刻同期が必須条件であり、同期精度を担保しつつ、RANのパフォーマンスを最適化するためのノウハウも必要だ。シスコにはその設計ノウハウがあり、フロントホールに使えるPTP対応の低遅延スイッチも提供できる」

用途・目的に応じてコア機能を柔軟に配置
5Gコアは、シスコが通信事業者に提供し、商用サービスでの導入・稼働実績も十分にあるソフトウェアをベースに開発している。通信事業者向けの場合は最小構成でもサーバー10台程度を要していたが、「ローカル5G向けに工夫し、オンプレミス側では冗長構成で1Uサーバー2台、冗長無しなら1台で運用できるようにした」(坪内氏)。

図表3は、5Gコアの機能群と構成を示したものだ。4Gや5G NSAの基地局を収容できるようEPC(4Gコア)の機能も入っている。緑色の機能はクラウドに、水色の機能はオンプレミス側に置くのを基本形とするが、導入するユーザーの目的や用途に応じて機能や配置を柔軟に変えることが可能だ。

図表3 Cisco Private 5G コア機能の構成
図表3 Cisco Private 5G コア機能の構成

例えば、基地局が1つでハンドオーバーが起こらない環境であれば、5Gコア側では低遅延なモビリティ管理の機能等は不要だ。「オンプレミス側はUPFだけで十分。トラフィックが増えてキャパシティを増やしたいなら、UPFだけが入ったサーバーを並べて容易にスケールアップさせられる。どのような要件・目的にも対応できるようにしている」と坪内氏は話す。

クラウドとオンプレミスにネットワーク機能が分散する構成のため、両者の連携が重要となるが、これについても、「スムーズな連携を実現するため、プロキシを独自に開発した」。なお、クラウドとの通信が一時的に途切れた場合にも、ネットワークと端末の接続を維持する機構を備えている。

 

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