エリクソンがO-RAN対応の「RIC」を製品化、他社製アプリ開発も可能に

5G無線アクセスネットワーク(RAN)をオープン化する「Open RAN」の取り組みが世界中で進むなか、エリクソンがマルチベンダー/仮想化RANを制御するコアコンポーネント「RIC」を製品化した。他ベンダー製基地局の制御を可能にするほか、サードパーティや通信事業者がRAN制御アプリを開発するためのプラットフォームとして提供する。

NTTドコモをはじめとする通信事業者、5G向けインフラベンダー等が推進する「O-RAN Alliance」を筆頭に、RANをオープン化/仮想化しようとする取り組みが加速している。従来は単一ベンダーが提供する専用装置で構成されていたRANをマルチベンダー化することでコストを最適化、さらに仮想化技術の導入により柔軟性や拡張性を向上させるのが狙いだ。(関連記事:O-RANの“本命”RICとは何か オープン化だけじゃないもう1つの挑戦

このOpen RANにおけるコアコンポーネントの1つとされるのが、「RIC(RAN Intelligent Controller)」である。RANを構成するRU(無線機)、DU(分散局)、CU(集約局)等のコンポーネントを管理・制御するコントローラーであり、複数ベンダーの基地局装置/ソフトウェアを用いてRANを構成した場合でも統合制御を可能にする。加えて、通信性能や品質のモニタリング、最適化といった“インテリジェント機能”によって5Gサービスの高度化、運用省力化をも実現する。

エリクソンが2021年11月17日に発表した「Ericsson Intelligent Automation Platform」は、まさにこのRICの機能を実現するためのプラットフォーム製品だ。同日に開催された記者説明会で、エリクソン・ジャパン CTOの藤岡雅宣氏は「RANのオペレーションと最適化、ヒーリング(障害の原因特定や復旧)の自動化に使えるプラットフォームだ」と紹介した。

Ericsson IAPの構成図
Ericsson IAPの構成図

O-RAN Allianceでは、無線リソース管理の最適化やオペレーションの自動化を行うためのプラットフォームとしてRICを定義し、このRICを包含し、RANの保守とオーケストレーションを行うフレームワーク「SMO(Service Management and Orchestration)」を定義している。

今回発表されたEricsson Intelligent Automation Platform(Ericsson IAP)は、このSMOに当たるものだが、今回の発表ではその中で展開、提供されるRIC機能にフォーカスして説明された。

通信事業者が独自に「rAPPs」開発・展開も
O-RANで定義されているRICは、1秒未満のリアルタイム性の高い制御処理を実行する「Near RT RIC」と、より時間的余裕のある1秒以上の制御を担う「Non RT RIC」の2種類がある。Near RT RICの機能は「xApps」と呼ぶRAN制御アプリケーションで実現され、Non RT RIC機能のアプリは「rApps」と呼ばれる。現時点でリリースするEricsson IAPの機能は、後者のNon RT RIC(rApps)だ。

Ericsson IAPは、エリクソンが開発・提供するrAppsのほか、「サードパーティのrAppsや通信キャリアのrAppsもこの上で動かせる」(藤岡氏)。Ericsson IAP上でrAppsを開発するためのSDK(ソフトウェア開発キット)も提供するという。

エリクソン・ジャパンCTOの藤岡雅宣氏
オンライン記者説明会でEricsson IAPに関して説明する
エリクソン・ジャパンCTOの藤岡雅宣氏

エリクソンは2020年にO-RANをサポートする方針を打ち出し、O-RAN Alliance内で自動化技術を検討するワークグループのChairを務めるなどしている。2020年10月には、クラウドネイティブなソフトウェアソリューションである「クラウドRAN」も発表。Ericsson IAPのリリースにより、同社によるO-RANのサポート範囲が一層広がることになる。

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