スマートホスピタルを目指して つぎはぎネットワークから抜け出せ

多くの病院ではネットワークが限界を迎えつつあるという。一方、医療分野のIT技術は、AIやロボット活用など日々進化している。病院ネットワークの現状と、スマートホスピタルへの取り組みをレポートする。

医療機関のICT化が進みつつある。電子カルテ、医事会計は以前から導入されているが、検査系、スマートフォンと連携できるナースコールシステムなど様々なソリューションが登場している。

さらに医療機関向けIoTソリューションも続々登場している。例えばベッドに設置したセンサーによって呼吸や心拍数、寝返りなどを測定する見守りシステムや、医療スタッフや患者、医療機器の場所を把握するための位置情報システムなどがある。新型コロナの影響で、接触型の入退室管理システムなどを非接触型のものに置き換えるニーズも出てきた。

また、最近では、遠隔診療や手術の様子を遠隔から見るなど、映像伝送の需要も高まっている。

ハイテクインター 営業部 部長 森池信也氏によれば「なるべくきれいな映像を低遅延で送り、かつ会話をしたいという要望がある」という。

広く普及するクラウド型のWeb会議システムは、一度外部のサーバーを経由するため、重要な個人情報を送る医療には適していない。病院内のネットワークに閉じた形で映像・音声伝送システムを構築するのが最も安全な方法だ。同社の提供するエンコーダー/デコーダー「TCS-8500」がまさにその用途に適しているという。「SRTというエラー訂正の機能もついているので、映像が乱れることはない」(同社 北海道テストセンター主任 田中宏樹氏)

つぎはぎのネットワーク「医療用の機器はどんどんIT化している。そういう意味ではネットワークの重要性は非常に高まっている」とアライドテレシス 執行役員 医療営業本部 本部長 木村有司氏は述べる。こうした背景から、医療機関向けネットワークソリューションを提供するアライドテレシスには、10年ほど前から問い合わせが増えているという。

しかし多くの病院のネットワークは「つぎはぎで、おざなりになっている」のが現状だ。

「病院は部門ごとにシステムを導入し、その都度異なる業者が各々ネットワークを勝手に構築しているためだ。よく分からないケーブルが置き去りで山積みになっていたり、どうにもならない状態の病院が多い」

図表1 100~199床のネットワーク構成図

図表1 100~199床のネットワーク構成図

アライドテレシスではこうしたネットワークを統合・最適化するため、コンサルティングから設計、施工、運用管理までを提供している。

「既存のネットワークがどうなっているかが誰も分かっていない、完成図がなかったり、また本来であればあり得ない、同じIPアドレスを持ったようなものがいくつもあるなど様々な課題がある。そうした状況から、新たにネットワークを引き直すにあたって、我々が調査やコンサルティングからやらせていただく」(同社 ソリューションエンジニアリング本部 東京プロジェクトマネージメント部 次長佐々木達也氏)

月刊テレコミュニケーション2020年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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