医療現場でのsXGPの実力検証 「脱Wi-Fi」を視野に福井大学病院が大規模トライアル

内線電話や電子カルテなどに使われている病院のWi-Fiは、sXGPで代替できるのか。福井大学病院で行われているトライアルで、医療現場でのsXGPの可能性が見えてきた。

「Wi-Fiがきれいにつながらないことが、医療機関で大きな問題となっている。sXGPはその有力な解決手段の1つになるはずだ」

福井大学医学部附属病院(以下、福井大学病院)医療情報部の山下芳範副部長は、昨年12月からトライアルを行っているLTEベースの自営無線規格「sXGP」への期待をこう語る。

福井大学医学部附属病院 医療情報部 副部長の山下芳範氏

福井大学医学部附属病院 医療情報部 副部長の山下芳範氏。
手にしているのはsXGPトライアルに用いられているLTEスマホ(シャープ製)



電子カルテの普及や医療機器のデジタル化などを背景に、Wi-Fiが病院でも広く活用されるようになってきた。病院全体をWi-Fiでエリア化し、看護支援システムなどに活用する事例も増えている。

とはいえ、オフィスなどに比べ、建物の構造が複雑で、鉄製の扉などの遮蔽体が多用される病院で、どこでも快適に使えるWi-Fi環境を実現するのは簡単ではない。

その解決策として山下氏が導入したのが、複数のアクセスポイント(AP)を仮想的に1つのAPとして運用するシングルチャネル技術(旧メルーネットワークスの「仮想セル」)だった。福井大学病院は、複雑なセル設計を不要にするシングルチャネルを用い、2011年に病院全体のWi-Fi網を再構築、通信品質の改善と運用管理の簡便化を実現した。

2014年には、このWi-Fi網を活用してIP-PBXに2000台強のスマートフォンを収容する無線内線システムを構築、従来の自営PHSからの移行を果たしている。

福井大学病院では、この無線内線システムを活用し、「次世代ナースコール」も導入している。電子カルテと連携し、患者の病状などの情報をスマートフォンに表示できるものだ。

しかし、山下氏は、現在のWi-Fi網には、まだ課題があると言う。

「Wi-Fiの技術自体の制約から、シングルチャネルを用いても、通話品質の確保が難しい」という点を指摘する。利用者からは「自営PHSより通話が途切れやすくなった」などの声が聞かれるという。

そこで、山下氏が注目したのがsXGPだった。データ通信、音声通信のいずれにも優れた性能を発揮するLTEを自営無線として使えるプライベートLTE規格である。

今回のトライアルは、sXGPを実際に医療現場に適用し、その実力を検証しようというもの。山下氏は「良い結果が得られれば、当然sXGPに舵を切る。併せて、自営PHSの後継システムの選定に悩んでいる病院に、新しい選択肢を提示できればと考えている」と狙いを説明する。

図表 福井大学病院のsXGPトライアルネットワークの構成

月刊テレコミュニケーション2020年5月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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