ローバンド5Gが年内にも欧米で始動 加熱する世界の5G投資とエリア整備

世界中で次々と5Gサービス開始の号砲が鳴り響くなか、にわかに注目が集まっているのが「ローバンド5G」だ。既存のLTE周波数帯を5G化して、早期にカバレッジを広げる動きがまもなく始まる。

「通信キャリアの5Gへの投資は穏やかに始まると予測していたが、それに反して2019年は激しく動いた」

ガートナージャパン テレコム&パブリック・セクタ担当 シニアディレクターの瀧石浩生氏はそう語る。

ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 テクノロジ&サービス・プロバイダー インダストリー テレコム&パブリック・セクタ担当 シニアディレクター アナリスト 瀧石浩生氏
ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門
テクノロジ&サービス・プロバイダー インダストリー テレコム&パブリック・セクタ担当
シニアディレクター アナリスト 瀧石浩生氏

ガートナーは8月22日、英国発のリリースで5Gネットワークインフラに関する調査・予測を発表し(図表)、世界各国で5Gインフラ整備が前倒しで進行するとの見通しを示した。「昨年時点で予測した2020年の5G投資額は31億ドルだったが、今回の発表では約3割増しの42億ドルとした。国家間およびキャリア間の競争意識が加熱した結果、5Gへの投資が前倒しされている」

なお、GSMAによれば、世界で39の商用5Gネットワークが8月時点で稼働しており、年末までに56に達する見込みだ。

図表 ワイヤレスインフラストラクチャの収入予測2018-2021[画像をクリックで拡大]
図表 ワイヤレスインフラストラクチャの収入予測2018-2021

LTEを上回るスピードで展開過熱ぶりを象徴するのが、今年4月に5Gサービスを開始した韓国の動きだ。SKテレコム、KT、LGU+の3キャリアの競争が加熱している。同国メディアによれば、加入者が10万人に到達するまでにかかった期間は、LTE開始時の4週間に対して、5Gはわずか1週間だったという。

SKテレコムは8月22日に5G加入者が100万人を超えたと発表しているが、これもLTEの2倍の速さだ。韓国全体の5G加入者数は8月に200万人を突破。当初は「2019年度末までに300万人」としていた予測も、年度末までに500万人と上方修正された。

エリアカバレッジも急速に広がっている。KTが公開している情報によれば、10月1日時点ですでに6万2000超の5G基地局が開通。キャリア3社は2019年末までに人口カバー率90%以上を目指している。

韓国KTが同社サイトで公開している「5G Coverage」(画像は10月1日時点)。マップによる表示のほか、設置および開局している基地局数等のデータも日々更新されている
韓国KTが同社サイトで公開している「5G Coverage」(画像は10月1日時点)。マップによる表示のほか、設置および開局している基地局数等のデータも日々更新されている

米中でも、5Gインフラ整備が急ピッチで進んでいる。中国では年内に5G基地局数が15万カ所に達する見通し。ベライゾンは今年中に対応エリアを30都市に拡大する方針だ。

競争の過熱ぶりを示すデータは他にもある。「5Gの展開ペースは4Gを上回る」と話すのは、ノキア カスタマーオペレーションズアメリカズで北南米地域CTOを務めるマイケル・マーフィ氏だ。9月に開催したイベント「Nokia Connected Future 2019」で北米とその他の地域の動向を紹介した。

ノキア カスタマーオペレーションズアメリカズ北南米地域CTO マイケル・マーフィ氏
ノキア カスタマーオペレーションズアメリカズ
北南米地域CTO マイケル・マーフィ氏

同氏が注目するのが、先陣を切ったキャリアと後続キャリアとの“差分”である。4G開始時は、北米で最初にサービスを始めたベライゾン(2010年12月)に28カ月遅れて、最後にTモバイルがサービスを展開。5Gではこれが「わずか2カ月になった」。

日中韓を加えた4カ国でみても、4Gでは差分が36カ月(最後はチャイナモバイル)だったのに対し「5Gでは12カ月になるだろう」と予測した。

月刊テレコミュニケーション2019年11月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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