「信号機」を5Gに開放する政府の狙い――全国20万拠点を結んだ情報インフラへ

信号機を活用し、5G基地局を整備する政府のプロジェクトが動き出した。あわせて5Gなどで信号機をネットワーク化し、2025年を目途に全国20万拠点をつなぐ情報インフラに進化させる構想だ。

全国にある約20万8000基の信号機を5G基地局の整備に活用できるようにする――。

6月14日に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(IT新戦略)」の目玉として打ち出された新プロジェクトが具体化に向けて動き出している。

このプロジェクトで狙うのは、信号機を5G基地局のロケーションとして開放し、5Gネットワークの整備を加速させることだけではない。5Gを用いて全国の信号機をネットワーク化し、渋滞緩和や自動運転の支援などに活用可能にすることも目的となっている。

閣議決定を受けて、5Gを推進する総務省、信号機を所管する警察庁などの関係省庁で構成される連絡会が組織され、7月2日に第1回会合が開かれた。

総務省と警察庁は、信号機に設置する5G基地局の仕様策定や、5Gを利用して信号機をネットワーク化するための技術検討に今年度から入る。

年度内に基本仕様の策定や機器の試作を行い、2021年度には量産仕様の装置を用いたフィールドトライアルを実施。2025年度に、新たな情報インフラとなる「次世代信号機」の全国展開を完了させる計画だ。

図表1 信号機と5Gとの連携
図表1 信号機と5Gとの連携

信号は理想の設置場所この構想は、IT新戦略の策定を担当している内閣官房 情報通信技術総合戦略室(IT総合戦略室)が、所管の異なる2つの行政課題を一気に解决できる方策として提起したものだ。

課題の1つが、5Gの基地局ロケーションの確保である。

2020年に商用展開が始まる5Gでは、28GHz帯、4.5/3.7GHz帯という高い周波数帯が利用される。これらの周波数帯は、広い帯域幅を確保でき、高速大容量の実現に有利であるものの、電波が遠くに飛びにくい。

そのため携帯電話事業者は、電柱や街灯なども活用しながら、市街地を中心に緻密な5Gネットワークを構築しようとしている。5G基地局の数は、現行の4G基地局数57万を上回ると見られ、基地局ロケーションの確保と設置コスト低減が、5Gエリアを拡大していく上での大きな課題となる。

そこで政府は、携帯電話事業者が簡便かつローコストに信号機のロケーションを利用できる仕組みを整備することで、5Gの普及を後押ししようとしているのだ。

「交差点という非常に見通しのよい場所に設置され、電源も確保されている信号機は、基地局の設置場所として理想的」

内閣官房 副政府CIO IT総合戦略室長代理で、慶應義塾大学環境情報学部教授の神成淳司氏はこう語る。

月刊テレコミュニケーション2019年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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