5Gを自営網として使える「ローカル5G」への割当が計画されている周波数帯のうち、年内にも利用可能になる28GHz帯・100MHz幅の利用イメージが見えてきた。
2月1日に開かれた情報通信審議会「ローカル5G 検討作業班」の第4回会合で、総務省は昨年末から行ってきた構成員からの意見聴取を踏まえた「検討の方向性」を提示。その中でローカル5Gでの利用が検討されている周波数帯のうち、先行して8月までに制度整備を終える予定の28.2-28.3GHzについて、「基本的な割当方針案」(以下、「方針案」)が提案された。
さらに作業班で併せて検討されている「自営BWA」─地域BWAバンド(2575-2595MHz)を利用するLTEベースの自営無線システムについても、8月までに制度整備を終える方針が打ち出された。
今回提示された「方針案」をベースに、ローカル5Gと自営BWAの免許割当イメージについて見ていくことにしよう。
「場所」の権利者に免許付与総務省は「方針案」において、ローカル5Gのコンセプトを「5Gシステムを用い、ローカルニーズに基づく比較的小規模な通信環境を構築するもの」と定義。そのうえで、「無線局免許を自ら取得することも、免許を取得した他社のシステムを利用することもできる」としている。
自営網としての利用だけでなく、通信事業者やSIerなどが免許を取得し、ローカル5Gサービスを提供することも許容されているのである。
もちろん、ローカル5Gによるサービス提供は、無制限に認められているわけではない。
「方針案」ではまず、「自己の建物内」または「自己の土地の敷地内」の「所有者利用」を基本とすることが示された。この「所有者」には、借地契約や建物の賃貸契約を結んだ者も含まれる。
ローカル5Gの免許は基本的に、その「場所」を利用する権利を持つ企業などに与えられるのだ。
利用エリアが敷地内や建物内に限定されても、建設機械の遠隔操作や産業用ロボットの自動運転など、企業向けの5Gのユースケースの多くは実現できる。
さらに方針案では、「所有者」から委任や同意を受けた者も、その範囲で免許を取得できるとした。これにより、前述の通信事業者/SIerなどによるローカル5Gサービスの提供が可能になる。ローカル5Gのシステム構築/運営支援は今後大きなビジネスに育ちそうだ。
こうした枠組みは、年内に先行して利用可能になる28GHz帯の電波の「あまり遠くまで飛ばない」という特性を活かしたもの。利用エリアを敷地内や建物内に限定することで、同じ周波数を利用するユーザー間の干渉を回避できる。そのため多くのユーザーで帯域を共用でき、周波数の有効利用も図れる。
今回の「方針案」で注目されるのは、道路やローカル5Gを利用していない他の所有者の土地を横切って、自らの施設をカバーする「道路利用」と「他者土地利用」も認める方向性が示されたことだ。
これにより、効率的なエリア構築が可能になる。CATV業界が希望しているローカル5Gを活用した高層マンションへの映像サービスの提供も実現しやすくなる。
この「道路利用」と「他社土地利用」は原則として、端末と基地局が移動しない「固定的利用」に限定される。移動通信型の広域サービスに利用されることを防ぐためだ。
また、横切る土地の所有者がローカル5Gを利用し始める場合には、アンテナの移動などの干渉回避措置が求められる(図表)。