――企業での無線LAN導入が進んでいます。これは、ネットワーク構築・運用の仕方にどのような影響を与えますか。
池田 モバイルやクラウドの利用が進むと企業ネットワークの果たす役割が変わり、再構築するタイミングを迎えることになります。無線LANの導入もその代表的な変化の1つと言えます。
我々のお客様への調査においても、「無線LAN環境の追加・構築」は優先順位の高い投資項目として上がってきています。ただし、無線LANの導入以外にもやるべきことは複数あります。
――まず何が必要ですか。
池田 無線LANを導入するということは、不特定多数のデバイスを想定するということです。様々な端末がアクセスしてくる。それをフィルタリングしなくてはいけなくなります。そこが従来との最大の違いですね。
有線LANとは異なり、無線LANの場合は認証の仕組みを導入することが前提となります。ガートナーでは、無線LANの認証と既存の認証機能の連携を推奨しています。無線LAN接続時に、ユーザーの認証と、Active Directoryによる既存のユーザー認証とをLDAP等で連携させるやり方です。
ここで重要な点は、この“基本動作”を無線LANだけでなく有線LANでも、社外からのリモートアクセスに対しても同じように行う必要があるということです。モバイルの利用は無線LAN経由だけでなく、社外から社内へのアクセスも当然想定されます。また、利用するユーザーとデバイスの数、種類もどんどん増えていきます。
したがって、無線LANを導入するときは、これら全体の認証基盤を統合し、かつスケーラブルに発展させられる仕組みを合わせて考えなければなりません。
――先を見越して、認証の仕組みを統合していくということですね。
池田 その通りです。我々の調査では、無線LAN導入企業の半数程度しか認証の仕組みを入れていません。リモートアクセスの認証まで統合している例は、まだわずかです。
日本においては、「リモートアクセスは特殊な人が申請して使うもの」という意識が強く、多数の社員に普通に使わせようという発想で構築していないのでしょう。そのため、現状では別々に構築・運用されているケースが多いと考えられます。
ただし、それでは運用が煩雑になりますし、将来、ユーザー数が増加したときの障害にもなりかねません。