SDNを活用した新たな広域イントラサービス
「A.NFV/SDN戦略コース」ではKDDI商品統括本部サービス企画本部長の片岡浩一氏が基調講演を行った。「お客様のビジネスに変革をもたらす実用SDN」と題したプレゼンテーションでは、同社が今年9月に提供を開始した新イントラサービス「KDDI Wide Area Virtual Switch 2(WVS 2)」が紹介された。
KDDI 商品統括本部サービス企画本部長の片岡浩一氏 |
WVS2はSDNを活用した新たな広域イントラネットサービスで、企業のネットワークやセキュリティ運用負荷を大幅に軽減、ビジネスのスピードアップとコスト削減を実現するもの。従来の広域イントラネットに(a)「セキュリティクラウド」と(b)「ネットワークの仮想化」の2つの機能が付加されている。
(a)のセキュリティクラウドは、WVS 2網上で用意されているインターネットファイヤーウォール、メールアンチウィルス、Webアンチウィルス、URLフィルタリング、IDS/IPS、UMTなどのセキュリティアプライアンスの機能をユーザーが各拠点のネットワーク構成を変更せずに利用できるもの。ネットワーク上の各種の機能を選択的に利用できるSDNの「サービスチェインニング」機能を活用して実現された。ユーザーがコントローラーからオンデマンドでリソースの拡張や機能の追加を簡単に行える点がその大きな特徴となっている。片岡氏は「必要な時にセキュリティ機能の容量を広げ、使わない時に狭めるといった運用を行うことでコスト削減が可能になる。体にピッタリ合ったスーツのようなネットワークが実現できる」とその利点を説明する。
(b)の「ネットワークの仮想化」は、インターネット接続帯域幅や社内のV-LANの構成をユーザーが柔軟に変更できる機能だ。片岡氏は「WVS 2では柔軟で迅速性に富んだネットワークを簡単な操作でしかも安価に実現することに力を入れた」とした上で、「今後もさらに新たな機能を加えより使いやすいサービスを実現していきたい」と意欲を見せた。
このほかに「S.次世代サービス戦略コース」では、日本ヒューレット・パッカード通信・メディアソリューションズ統括本部 CMSプラクティス本部 本部長の三木寛氏が「多彩なサービスを柔軟に提供していく時代に、HPが貢献できること」と題して、同社のNFV/SDNソリューションやIoT/M2Mへの最新の取り組みなどを紹介した。
また、ジュニパーネットワークス サービスプロバイダービジネス統括本部 リードセールススペシャリストの高橋利臣氏が「ジュニパーのNFVビジョン~共創を実現するエコシステムの構築に向けて~」のタイトルで「ベンダーに縛られない」オープンなエコシステムの実現に向けた同社のNFV戦略を紹介した。
「A.NFV/SDN戦略コース」では、華為技術日本ソリューション&マーケティング本部 ソリューションセールスエキスパートの桜井浩哲氏が「ネットワーク仮想化の現状と展望」として同社のNFV/SDNソリューションと世界の通信事業者との技術実証実験の状況などを紹介した。
エリクソン・ジャパンカスタマー・ソリューション&エンゲージメント統括本部固定ブロードバンドコンバージェンス本部長のペオ・レート氏は「Network Programmability for the Networked Society」のタイトルで、同社のNFV/NFVソリューション戦略を説明した。
またブロケード コミュニケーションズ システムズ執行役員 SDN/NFV ビジネス開発本部 The New IP 推進室本部長の尾方一成氏は「そろそろビジネスに貢献するSDNを考えませんか?~キーワードは“オープン”~」と題してSDNネットワーク構築のポイントを物理と仮想の両面から時間軸に沿って解説した。
NECテレコムキャリアビジネスユニット第一キャリアサービス事業部 事業部長代理の笠原淳至氏は「NECのNFV/SDNに向けた取り組み」と題して、vEPC、vMVNO-GW, vPCRFやテレフォニカ様と共同で開発中の家庭内通信機器の仮想化ソリューション(vCPE)などのソリューションを紹介した。
エヌ・シー・エル・コミュニケーション代表取締役社長関根尚氏は「サービスプロバイダの競争力を支える次世代データセンターネットワークとは?」と題して、同社が国内総代理店を務める米Pica8社のソリューションを軸に既存ネットワークからSDNへ至る現実的な「解」について解説した。
技術の組み合わせで新たなフューチャーを
モバイル分野の「B.4G/5G戦略コース」では、NTTドコモ取締役常務執行役員R&Dイノベーション本部長の尾上誠蔵氏が「5G、さらなるモバイルの進化」と題して基調講演を行った。
NTTドコモ 取締役常務執行役員 R&Dイノベーション本部長の尾上誠蔵氏 |
尾上氏は、まずLTE/LTE-Advanced(4G)の現状について世界市場で3Gを上回るペースで普及しつつあることなどを説明した上で、2020年以降に実用化が見込まれるその次の世代の第5世代移動通信システム「5G」について解説した。5Gは標準化に向けた議論が行われている段階で技術仕様は固まっていないが、尾上氏は「PDCやGSMなどのデジタル携帯電話(2G)のTDMA、3GのW-CDMA、LTE/LTE-Advanced(4G)のOFDMAに相当する特徴的な技術が5Gでは存在しない」と指摘し、複数の技術の組み合わせによって新しいフィーチャーを創りだしていくことが重要になるという見方を示した。
さらに5Gでは伝搬損失が大きい6GHz以上の高い周波数の利用が想定されていることから「既存帯域のシステムをホットスポット的に補完するもの」とする見方があることを「間違ったストーリー」と批判。技術の組み合わせによって5Gでもある程度広域のエリアがカバーできるという見方を示した。例えば、既存帯域のシステムとキャリアアグリゲーションを組むことにより、鋭い指向性を持つ多数のアンテナ群(マッシブアンテナ)を使って実用的な遠距離伝送が可能になるという。
5Gのコンセプトについては、4Gの発展系となるシステムと新たな無線システムを組み合わせたものになるという見方を示した。10Gbps超のスループットや1000倍のネットワーク容量、1m秒以下のネットワーク遅延といった高い要求条件を満たすことで、従来の移動通信システムでは対応できなかった多様な利用形態をカバーできるようになるとした。
「B.4G/5G戦略コース」では、この他にノキアソリューションズ&ネットワークステクノロジー・ディレクターの赤田正雄氏が「LTE-advancedの進展とNokia Networksの5Gビジョン」と題して、LTE-advancedの技術動向と同社の5Gに向けた取り組みを紹介した。
華為技術日本 ワイヤレス・マーケティング部担当部長の鹿島毅氏は「4Gトレンドとその先への展開」のタイトルで、同社が想定する4Gから5Gへの技術ステップと5Gへのビジョンについて説明した。
また「C. 最新技術&ソリューションコース」では、日本テラデータインダストリーコンサルティング統括部 シニアコンサルタントの鎌田幹生氏が「ビッグデータ時代の顧客経験管理と戦略的ネットワーク・インテリジェンス」と題して、ビッグデータを活用した新たな顧客管理手法を解説した。
エンピレックスでプロダクトハウス テクニカルサービスディレクターを務める大和田哲氏が「起こりうる問題を予測!~新たなサービス品質管理手法とは~」のタイトルで、様々なデータを関連付けることでユーザーに影響を及ぼす前に問題を把握し、解決に結び付けるネットワーク管理手法を紹介した。