コンテナではなくIsolate 0ミリ秒で起動
AIエージェントの普及に伴い、課題となるのが計算資源の確保だ。
10億人の知識労働者がそれぞれ1つのAIエージェントを使い、各エージェントが1つのCPUを必要とすれば、合計10億個のCPUが必要になる。一方、世界のサーバー向けCPUの年間生産量は約3500万~4500万個であり、必要量は年間生産量の約20倍に上るという。

既存インフラはそのままエージェント向けには使えない
また、既存のコンピューティングインフラは、AIエージェントの活動に、必ずしも適していない。従来のコンテナ環境は、決められたアプリケーションのインスタンスを大量に並列実行する用途に適している。これに対し、AIエージェントは処理ごとに異なるコードを生成し、実行後に廃棄するため、コンテナの起動に伴う処理負荷が制約になると乙部氏は指摘した。
そこで、クラウドフレアがAIエージェント向けの実行基盤に位置付けるのが、JavaScriptエンジン「V8」を基盤とする「Isolate(アイソレート)」である。
Isolateはコンテナランタイムを必要とせず、コールドスタートを0ミリ秒にできる。処理がない場合は稼働数をゼロまで減らし、必要に応じて水平方向へ展開できるため、処理内容が異なる多数のAIエージェントを個別に実行するのに適しているという。
また、AIエージェント向け軽量ブラウザ「Cloudflare Kitesurf」は、Cloudflare Workers上で動作し、Webコンテンツを高速かつ低コストで読み取る。
Isolateとコンテナの双方からアクセスできる共有仮想ファイルシステム「@cloudflare/computer」も公開した。会話履歴や生成ファイル、外部ツールの出力結果などを複数の実行環境で扱えるようにする。
このほか、信頼できないコードを隔離して実行する「Cloudflare Sandbox」、AIエージェントが生成したコードを即時に配置・起動する「Cloudflare Dynamic Workers」、実行時の情報を保存・共有するAIエージェント用のファイルシステム「Cloudflare Arttfacts」、AIエージェント構築用の「Agents SDK」などを提供する。
「読む・探す・呼ぶ・払う」を整備 行動からボットを判定
AIエージェントがアクセスするWebサイトにも、人間向けとは異なる仕組みが必要になる。
人間向けのWebは、画面上のログインやCookie、HTML、フォーム入力、クレジットカード決済などを前提としてきた。AIエージェント向けのWebでは、暗号署名による認証、構造化されたコンテンツ、APIによる機能の呼び出し、自動決済などが求められる。
この変化に対応するために必要な要件として、乙部氏は、AIエージェントを認証・識別できる「Identifiable」を基礎に、「Readable(読み取り可能)」「Discoverable(発見可能)」「Callable(呼び出し可能)」「Payable(決済可能)」の4つを挙げた。
Readableには、WebコンテンツをAIエージェント向けのMarkdown形式へ変換する「Markdown for Agents」で対応する。
Discoverableでは、AI向け検索インデックス「AI Search」や、主要なAIサービス上での視認性を測るアンサーエンジン最適化(AEO)を提供する。
Callableでは、AIと外部のデータや機能を接続するMCP(Model Context Protocol)をブラウザから利用する「WebMCP」や、MCPサーバーを外部へ公開する「Remote MCP Server」を用意する。
Payableには、AIエージェントがコンテンツやAPIの利用料を支払う「Wallets」と、コンテンツ提供者がエージェントから料金を受け取る「Monetization Gateway」を位置付ける。決済基盤として「Trusted Agent Protocol」と「x402」も紹介した。
一方、企業は正規のAIエージェントと不正なボットを区別し、アクセスを制御する必要がある。
クラウドフレアは、ボットの情報を管理する「BotBase」、ボットの通信を判定・制御する「Bot Management」、AIによる検索、エージェント利用、学習目的のクロールを管理する「AI Crawl Control」を組み合わせる。
また、AIエージェントと人間を見分ける新たな行動検証エンジン「Precursor」も先ごろ発表した。これは、マウスの軌跡やキーボードの入力リズムなど、セッション全体の振る舞いを継続的に評価するものだ。

Precursor
従来のCAPTCHAのように、画像選択などの追加操作を利用者へ求めず、人間とAIエージェント、ボットを判定する点を特徴とする。AIクローラーの通信量や活動内容を可視化・分析する機能も提供する。
同社は、エージェントを動かす実行基盤、AIエージェントが利用しやすいコンテンツ、認証や脅威対策を同一のネットワーク上で提供する方針だ。松本氏は、AIエージェントの開発、構築、運用、セキュリティを統合的に支える基盤として、日本市場でも展開を進める考えを示した。









