AIによる「マシンスピードの攻撃」にどう対処するか、AWSが示す処方箋とは

生成AIは、セキュリティ対策の「猶予」を壊してしまった。攻撃側がAIを活用することで、脆弱性の公開から悪用までの平均時間は約20時間まで縮んでいる。一方、パッチ適用に要する期間は平均30日を超える。埋まらない差を前に、金融庁・日銀は金融機関に「システム停止への備え」まで求めている。この危機にAWSが示した処方箋は、防御側の自律化だ。

「止める判断」を求めた金融庁・日銀

こうした変化に、当局も動いた。

金融庁と日本銀行は2026年5月22日、「フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応」に係る要請を発出。フロンティアAIへの対応を経営課題として扱うことなど9項目を挙げた。

瀧澤氏が異例だと指摘したのは、「優先サービス/ITシステムの停止に備える」ことが明記した項目だ。行政がこれまで求めてきたのは障害を起こさないことであり、止める判断を検討せよという記述は従来と大きく異なり、「誰がシステムを止める権限を持つのか、停止の方法はどうすればいいのかを考えなければいけない」。

パッチの適用には一定期間の運用テストが必要だが、冒頭の通り、そんな猶予は最早許されない。瀧澤氏は、運用そのものを変える動きが多くの企業で始まっていると強調した。

年1回の診断から、常時の検証へ

では、防御側は何をすればよいのか。瀧澤氏が挙げたのは、AIによる先回りだ。攻撃者がAIを使うのであれば、防御側もAIを使う。

従来の脆弱性診断は専門ベンダーに委託し、年1回あるいは四半期に1回といった契約で実施するものだった。だが、人間が介在すると対応が遅れる。

そこでAWSが投入したのが「AWS Continuum」である。自動でペネトレーションテストを行う既存サービス「AWS Security Agent」に加えて、コードスキャン、脅威モデリング、コード脆弱性への対応(いずれもプレビュー)の4機能で構成される。発見・優先順位付け・検証・修復を1つのループとして自動化するソリューションだ。

AWS Continuumの構成要素

AWS Continuumの構成要素

特徴は2つある。1つは、優先度の判定だ。単に脆弱性の一覧を出すだけでは「リスクがないので対応しない、という判断をされることがある」(瀧澤氏)。守るべきデータへのアクセス経路を踏まえ、本当に危険なものを絞り込む。

もう1つは、隔離されたサンドボックス内で実際に悪用を再現し、悪用可能性を検証する点である。脅威ではあっても既存の防御で守れている場合は、深刻度スコアを下げてレポートする。最初は、人間が介在する学習モードから始め、判定に対する人間のフィードバックを学習して徐々に自律性を高める設計だという。

AWS Continuumの対象環境はAWS上に限らない。オンプレミスやマルチクラウド、SaaSの環境も対象となる。出力先もSlackや、Splunk等のSIEMのほか、MCP(Model Context Protocol)にも対応し、社内のコーディングエージェント経由で検出結果を照会することも可能だ。

このように、人間の介在なしにマシンスピードで発見から検証、修正まで対応できる仕組みと体制の構築が今後は求められる。

AWS Continuumで動作するAIエージェント

AWS Continuumで動作するAIエージェント

「負担」ではなく、「体制を変える好機」に

「今までとは、やり方が大きく変わってしまっている。これを“負担”に思うかもしれないが、新しい体制に変えるための好機であると捉えてもらえるといい」。瀧澤氏は勉強会のまとめとしてそう語った。

企業内のシステムや運用体制・業務を大きく変えることは難しく、しかも、これまでのセキュリティ対策が万全だと言い切れる企業は多くない。運用負荷も年々高まっている。高性能AIの台頭とその悪用という外部環境の変化は、それを大きく見直すチャンスとも捉えられる。

AWSが示す「今とるべき対応」

AWSが示す「今とるべき対応」

その柱となる「AIを使った防御」について、AWSとして「セキュリティエージェントをはじめ、AIを組み込んだセキュリティサービスを提供している。さらに今後は、マネージドサービスに専念したり、OSやミドルウェアの脆弱性管理をAWSにオフロードする仕組みを作っていくことが必要」と滝澤氏。ユーザー企業の運用負荷軽減に貢献するサービスの提供に注力していきたいと話した。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。