AIエージェント時代へ、シスコが挑む「ネットワークの再設計」

AIチャットボットから、自律的に働く「AIエージェント」へと主役が交代するなか、その備えとしてシスコシステムズが提唱するのが、「ネットワークとセキュリティの再設計」だ。日本法人が2026年7月8日に開催したメディア向け説明会では、再設計が必要な理由としてAIの普及に伴って生じる様々なリスクを挙げるとともに、その対抗策を提示した。

脆弱性の発見からエクスプロイト作成まで「8時間」

リスクはこれだけではない。グローバルネットワーキングセールス シニア バイスプレジデントのブリンク・サンダース氏は、アンソロピックのフロンティアAIモデル「Claude Mythos」の登場以来、「セキュリティのあり方そのものが変わってきている」と強調した。

Man in a light blue shirt and gray blazer speaks into a handheld microphone at a Cisco event, with Cisco logos on the backdrop behind him.

米シスコ グローバルネットワーキングセールス シニア バイスプレジデントのブリンク・サンダース氏

サイバーセキュリティと脆弱性発見に特化したMythosは、その危険性から一般公開が見送られているが、サンダース氏はMythosそのものの脅威ではなく、脆弱性の発見から、それを利用したサイバー攻撃のエクスプロイトを作成するまでの時間が大幅に短縮されていることが問題だと指摘した。「その時間は、2018年の約2.5日から、わずか8時間に短縮された」

これは、企業のネットワーク/セキュリティ運用に深刻な問題を引き起こす。セキュリティ対策としてのパッチ適用は「年に1回、あるいは半年に1回が一般的」(同氏)だ。サイバー攻撃者がAIを活用して、かつてないスピードで攻撃を仕掛けてくる今、従来通りのネットワーク/セキュリティ運用では対抗できない。

被害は深刻だ。サンダース氏は、Global 2000企業のダウンタイムコストが直近1年間で4000億ドルに達したというデータを紹介。また、シスコの調査では、対象企業のうち86%が、過去1年間にAI関連のセキュリティインシデントを経験しているという。

シスコの対抗策は「運用のシンプル化/自律化」

こうしたAIエージェント時代のリスクに対処するため、シスコシステムズは6月に米国で開催した年次イベント「Cisco Live 2026 Las Vegas」において、いくつもの対抗策とソリューションを発表した。その核となるのが、次の3つだ。

1つが、ネットワーク/セキュリティ運用のシンプル化である。AIエージェントを活用して運用を自律化する「AgenticOps」を提唱。これまでは異なるツールで運用・監視やポリシー設定・適用を行っていたネットワーク、セキュリティ、コンピュート、オブザーバビリティ機能を1つのダッシュボードに統合したドメイン横断型の統合プラットフォームとして「Cisco Cloud Control」を発表した。

統合プラットフォーム「Cisco Cloud Control」

統合プラットフォーム「Cisco Cloud Control」

これは、シスコが長年にわたり蓄積したネットワーク運用データを学習した専用AIモデルが、異常検知や原因の特定、復旧といった工程を自律的に行うもの。IT/ネットワークインフラ全体を把握でき、人間とAIが運用データを共有しながら、共同作業によって問題を解決する。

ネットワークとセキュリティを融合

2つめは、ネットワークとセキュリティの融合だ。サイバー攻撃が圧倒的なスピードを有し始めた今、「ネットワークにセキュリティを組み込みことが不可欠」とウェスト氏は強調する。

具体的な対策の1つが、ネットワークスイッチ等への「Cisco Live Protect」の実装だ。ネットワーク機器や重要ITインフラの脆弱性を、パッチ適用のためのシステム再起動やダウンタイムなしで、一時保護・緩和するセキュリティ機能である。

ネットワークに組み込まれた様々なセキュリティ機能を、共通ポリシーで統合運用

また、データセンターやクラウド、オンプレミスなどを組み合わせたハイブリッドな環境の全体にわたって、一貫したポリシーを適用する「Hybrid Mesh Firewall」や、将来の量子コンピュータによる復号リスクに備えた耐量子暗号への対応も進めているという。

前述のCisco Cloud Controlによって、これらセキュリティ対策も単一のプラットフォーム上で運用可能になる。

そして、これらを具現化するためにハードウェアも刷新する。これが3つめの柱だ。

AI時代の要件に対応するためにネットワーク機器も刷新

シスコは自社開発のプログラマブルシリコン「Silicon One」シリーズを核に、データセンター向け/キャンパス向けスイッチやルーター、Wi-Fi 7対応Wi-Fiアクセスポイント等の新ラインナップを発表した。

データセンター向けでは、102.4Tbpsの性能を誇る新チップ「Silicon One G300」が目玉だ。また、耐量子暗号(PQC)やSASE機能を備えた新世代セキュアルーター、最大570Gbpsの処理性能を持つ「Secure Firewall 6100」、屋外向けWi-Fi 7アクセスポイント「Catalyst 9177」なども発表。さらに、工場をはじめとするOT(制御技術)環境向けにも、PQCなど新機能を備えた産業用ネットワーク製品群も新たに投入する。

これらの施策を通じて、AIエージェントと人間が協働する時代に向けて、企業の競争力を左右するネットワークインフラの刷新を支援していく。

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