マルチエージェントが「全体最適」
一方で、自律型ネットワークのアーキテクチャの方向性は定まりつつある。機能・役割ごとにマイクロサービス化されたAIエージェントが連携するAgenticOpsだ。
通信事業者のネットワークなら、アクセス、エッジ/メトロ、トランスポート、コア等の各ドメインに精通したAIエージェントが個別にデータを分析し、相互連携することで全体最適を図る。エンタープライズなら有線LAN、Wi-Fi、ファイアウォール、SDWAN等の各ドメインのエージェントが連携する。各分野を深く理解するエージェントが情報を出し合うことで、ネットワーク全体の可視化・分析精度は大きく高まる。エージェントの追加によって機能を容易に拡張できることもAgenticOpsの強みだ。
シスコシステムズも同様に、AIエージェントと人間が協働するAgenticOpsの実現を目指す。2026年6月開催の「Cisco Live!」で発表したネットワーク管理プラットフォーム「Cisco Cloud Control」について、AIソフトウェア・プラットフォーム担当 SVP/GMのDJ・サンパス氏は、「エージェントが重作業をこなし、人間が重要なポイントを監督・制御する“真の協働”を目指している」と話した。デバイス、アプリケーション、ネットワーク、さらにサイバーセキュリティといった各ドメインに特化したモデルを活用し、AIエージェントと運用チームのスタッフが仮想ワークスペース「Cisco AI Canvas」上で情報を共有。AIエージェントが調査結果に基づく提案を行い、人間のオペレーターが実行を監視・承認するといった流れでクロスドメイン運用を実現する。

Cisco Cloud ControlのUI「AI Canvas」の画面
「オープン」は欠かせない
自律化に向けて、業界全体が向き合うべき課題がある。「AIエージェントのサイロ化」だ。
「マルチベンダー化がポイントだ」と指摘するのは、NOSの牛込氏だ。ネットワーク機器の主要ベンダーはそれぞれ自社製品に最適化されたAIエージェントを開発・提供しているが、これらは「自社の特定ドメインには強いものの、他社製品を含めたネットワーク全体を横断的に管理・分析することは難しく、サイロ化が新たな課題となりかねない」。例えば、異ベンダーのAIエージェントがそれぞれアラートを発した場合、情報を統合して“真の原因と対処法”を導き出す仕組みはまだ確立されていない。AIが自律的に設定変更を行って不具合が発生した場合、責任問題はより複雑になる。
ここで重要になるのが「オープン性と標準化」だと、HPE Networking事業統括本部長の本田昌和氏は指摘する。「我々の製品だけでできることはたくさんある。しかしユーザーから見れば、他社と連携できるか否かこそが評価ポイントになる。他社の製品やエージェントと連携できるよう、業界標準のオープンなプロトコルで情報をやり取りし、全体を俯瞰しながら判断できるフレームワークが必要だ」











