音声をアクションへつなげる
――成長エンジンであるAIは、具体的にどのような使い方で効果が出ているのですか。
モス ビジネスにおいて音声は、現在も重要なインフラです。大事な交渉、機密性の高い商談、クレーム対応─。こうした場面で選ばれるのは、テキストではなく音声通話です。そして今、AIの登場によって音声データはまさに「データの宝庫」へと変わりました。
音声には感情を読み取る「センサー」としての役割があり、例えば、顧客が不満を感じているのか、話し手が自信を持っているのか否かを、言葉の内容だけでなく声のトーンからも把握できます。さらに、顧客が求めるアクションをリアルタイムに起こせる点も音声ならではの強みです。
以前は手作業でしか抽出できなかったため事実上活用されていなかった情報が、今では自動的に分析できます。Zoom PhoneとZoom AI Companionの統合によって、通話内容から自動的に顧客の要望を満たすためのタスクやトラブルチケットに変換したり、CRMの情報をアップデートするといったビジネスプロセスが実現できるようになりました。
私たちはこれを“System of Action”、対話を行動に変え、業務を自動で完結させるプラットフォームと呼んでいます。音声通話から得られた洞察を行動に直結させます。
――オンプレミスPBXでは、そうしたAI活用は難しいですか。
モス ほとんどのPBXにはAI機能が内蔵されておらず、同様の機能を得るには機器の追加購入や複雑な導入作業が必要です。対して、Zoom Phoneの有料ライセンスには、文字起こしや要約、タスク生成・登録などをこなすZoom AI Companionが含まれており、圧倒的なコストメリットを提供できます。
AIが通話データから業務を学ぶ
――日本での導入事例を教えてください。
モス 非常に大きな影響力のある事例が、次の2つです。
1つは NEC で す。オンプレミスPBXの代表的なベンダーが、クラウドPBXへの移行という大変革を実行しました。11万人の従業員にZoom Phoneを展開し、導入・運用および通話料を含むトータルコストを70%削減しています。さらに、音声データを自社のAIプログラムに活用するプロジェクトも進んでいます。
NECでは、役員をAI化した“AI CxO(分身AI)”が会議に参加します。その分身AIを生み出すコアAI「cotomi」が学ぶ社内データには、Zoom Phoneで取得・蓄積した音声データと、Zoom AI Companionが生成したテキストや要約が含まれます。電話のやり取りのデータを用いて、cotomiに社内業務のコンテキストを学習させるのです。
――Web会議の議事録作成や要約は一般的になりましたが、普段の業務で交わされる通話からもAIは価値を生み出せるということですね。
モス その通りです。NECのような大企業だけでなく、中小企業や個人事業主にもそれが可能であることを強調したいですね。
もう1つの事例は光通信です。同社もPBXに関わる年間コストを3億円から約6000万円へと大幅に圧縮しました。通話の要約にZoom AI Companionを活用してコール後の事務作業を削減し、Zoom Revenue Acceleratorを営業コーチングやスキル向上に役立てています。
――コーチングとは、具体的に何を行うのですか。
モス アウトバウンドコールの通話内容を分析し、マネージャーが営業成績のよい人と悪い人を比較して指導を行うことができます。例えば、キーワードの使い方について改善を促し、研修や指導で学んだことが実践できているかを確認します。営業電話のスコアカードを作るようなものです。
光通信といえば日本人の誰もが知るアウトバウンド営業の会社であり、そこがZoom Phoneを全面的に導入したことで、日本のBPO事業者が軒並み、私たちに興味を示しました。
――最後に、日本市場に対する評価を聞かせてください。
モス 当社の海外市場の中で、最も成長が速いのが日本です。その背景には、長らくオンプレミスシステムが主流だったという歴史があります。PBXの保守サポート終了を契機に、クラウド化を検討する企業が増えています。
また、奈良市をはじめ、自治体など公共部門での活用も広がっています。
奈良市は、住民からの電話にAIが自動回答し、必要に応じてコールセンターや事務職員へ転送する仕組みを構築しました。自治体のDXに貢献するという意味においても、日本は重要な拠点となっています。
今後は、Zoom PhoneとZoom Contact Centerの両方を組み合わせて使う顧客を増やしていきたいと考えており、そのためにもチャネルパートナーとの連携をさらに深めていきます。
[月刊テレコミュニケーション 2026年6月号の記事を再構成]









