世界最先端のワイヤレス立国へ――総務省の富永電波部長に聞く「新しい通信政策」

5G(第5世代移動通信システム)の実用化が見込まれる2020年、さらにその先の電波利用を見通した議論が総務省の「通信政策ビジョン懇談会」で進められている。富永昌彦電波部長に「世界最先端のワイヤレス立国」に向けた新たな時代の通信政策の取り組みを尋ねた。


――今年1月に発足した電波政策ビジョン懇談会で「電波ひっ迫解消のための政策の抜本的な見直し」と、「世界最先端のワイヤレス立国の実現・維持」をテーマに、新しい電波利用の姿が議論されています。狙いはどこにあるのですか。

富永 電波利用へのニーズは近年とみに高まってきていまして、特に移動通信分野ではデータトラフィックが年1.7倍という非常に高い伸びを示しています。これが5年、10年続けばトラフィックは現在の数百倍から1000倍になる可能性があります。

利用形態から見ると、人と人とを結び付けるツールとして使われてきた携帯電話が、M2M――モノとモノとを結び付けるツールに発展しようとしています。少し先を見通すとあらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)の時代を迎えます。そのモノとの接続では電波が不可欠ですから電波利用は間違いなく爆発的に増えることになります。

そこで、こうした新時代の電波利用の姿を展望し、それを実現していくための方策、例えば周波数がどれだけ必要なのか、行政としてどういう政策をとればいいのか、この新たな時代の電波利用を支える産業・社会はどういうものになるかなどを検討していただいているのです。

総務省 総合通信基盤局 電波部長 富永昌彦氏

――2020年を1つのターゲットとして議論が進められています。

富永 2020年というタイミングには大きく2つの意味があります。

1つは、今年周波数を割り当てることとなる第4世代移動通信システム(4G、LTE-Advanced)の次の移動通信システムとなる5Gの実用化が2020年頃に見込まれています。そこで2020年以降を見据えて移動通信システムがどのようなものになるかを検討していただいています。

もう1つ、2020 年には東京オリンピック/パラリンピックという大きなイベントが日本で開催され、ここで電波利用が極めて重要な役割を果たすことになります。

このタイミングで5Gなどが実用化できれば、「日本ではこんなに素晴らしい電波利用が行われている」と世界に向けてアピールできるはずです。それも視野に入れた形で議論をお願いしているのです。

月刊テレコミュニケーション2014年6月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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富永昌彦(とみなが・まさひこ)氏

1982年東京大学大学院修了後、郵政省(現総務省)入省。通信政策、電気通信事業政策、放送政策、情報通信技術政策を担当する部局を経て、2002年より移動通信課長、電波環境課長、通信政策課長。2008年情報通信研究機構理事、2012年東北総合通信局長を経て、2013年6月より現職

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