無線LANビジネス推進連絡会は2014年5月27日、「大規模災害発生時における公衆無線LANの無料開放に関するガイドライン」を公表した。
本ガイドラインは、公衆無線LANを提供する事業者が、大規模災害発生に備えて、災害対応措置を事前に検討・準備する際の留意事項や望ましい事項を明らかにしたもの。13年6月に総務省が公表した「無線LANビジネスガイドライン」の提言と、13年9月に釜石市、仙台市で実施した実証実験に基づき策定した。
写真左から、総務省総合通信基盤局データ通信課長の河内達哉氏、無線LANビジネス推進連絡会会長の小林忠男氏、無線LANビジネス推進連絡会運用構築委員長の大内良久氏 |
今回の発表の目玉となったのは、「災害用統一SSID」による無料開放だ。これは、大規模災害発生時に、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルが提供する公衆無線LANサービスを、契約者以外のユーザーでも利用できるもの。統一のSSID「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」でインターネット接続が可能になる。本ガイドラインでの大規模災害の定義である「携帯インフラが広範囲に被害を受け、携帯電話やスマートフォンが利用できない状態が長時間継続する恐れがある場合」に、災害発生から72時間以内に通信手段として提供する。
これにより、大規模災害時に携帯電話やスマートフォンで通信できない状況となっても、各キャリアの公衆無線LANサービス利用者だけでなく、平時に公衆無線LANを利用していないユーザーでも通信手段の確保ができる。また、避難所などに、複数の事業者が別々にアクセスポイント(AP)を仮設する必要がなくなる。携帯電話事業者間で地域ごとに分担してAPの仮設を行えば、これまでよりも早期の通信手段を提供できる。現時点では前述のNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルによる開放だが、「他の通信事業者とは、これから調整していきたい」と無線LANビジネス推進連絡会会長の小林忠男氏(NTTブロードバンドプラットフォーム代表取締役社長)。実装については「各社で検討し、可及的速やかに行う」とした。
ただ、災害用統一SSIDで注意したいのは、通常利用しているSSIDとは異なるため、「緊急時」の利用であるのに端末操作が必要なことだ。特に、普段から公衆無線LANサービスを利用しない人にとっては大きなハードルだ。釜石で行われた実証実験でも、約半数の人が災害用統一SSIDに接続できなかったという。これに対し、無線LANビジネス推進連絡会 運用構築委員長の大内良久氏(KDDIコンシューマ事業企画本部 Wi-Fi事業推進室長)は、「接続率の向上策として、防災訓練などでの災害用統一SSIDでの接続、地方公共団体の避難所への接続手順書の用意、自動接続できるアプリの開発などを考えている」と述べた。
今回の災害用統一SSIDによる無料開放のほかにも、大規模災害時の公衆無線LANの提供方法として、「固有のフリーSSID」による無料開放も従来から取り組んでいる。これは、災害時に限り、自治体等が独自に提供している公衆無線LANサービスにユーザー登録なしで利用できるものだ。例えば、福岡市の「FUKUOKA CITY Wi-Fi」は、「震度5弱以上」などの激甚災害時に認証手続なしでインターネット接続できる。
無線LANビジネス推進連絡会は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、インフラとしての公衆無線LAN利活用を推進していく。大規模災害時の公衆無線LANの開放、訪日外国人向けの公衆無線LANの整備を取り組みの柱とし、官民連携でアクセスポイントの拡充、セキュリティを確保した上での利便性向上を図る。