セルラーPCでゼロトラスト実現、AI時代のセキュリティ対策

ソフトバンク 先端技術研究所 先端技術高度化推進室 室長 朝倉慶介氏
ソフトバンク 先端技術研究所 先端技術高度化推進室 室長の朝倉慶介氏は、現在のエンタープライズITが抱える課題として、ハイブリッドワークスタイル、セキュリティ懸念、複雑なネットワーク、多様なデバイスによる運用コストの増加を指摘した。特にランサムウェアの脅威は急加速している状況だ。
警察庁のデータによると、令和7年上半期の被害報告件数は116件に達しており、従来の境界防御型セキュリティでは限界で、VPNを介して境界内に侵入されると対処が困難になるという。AI時代は、AIエージェントが企業データにアクセスしたり、他のAIと連携したりすることが増えると予想されるが、ユーザーに代わって様々な操作を行うAIエージェントが悪用されると大きなセキュリティリスクにつながるため、「AI時代においても、ゼロトラスト思想が最重要。何も信用しない、常に疑い、検証、認証をするというアプローチを徹底することで、セキュリティリスクに対応できる」。朝倉氏はこのように述べ、そのゼロトラストを実現する具体的な手段として、セルラーPCとモバイルネットワークの活用を提案した。

セルラーPCとモバイルネットワークの活用ポイント
EVCNで5GとエンタープライズITを統合

エリクソン・ジャパン ソフトバンク事業統括本部 新規ビジネス推進本部 本部長 滝沢耕介氏
エリクソン・ジャパン ソフトバンク事業統括本部 本部長の滝沢耕介氏は、EVCN(Enterprise Virtual Cellular Network)の概念を紹介した。EVCNは、5GネットワークとIT構成要素を接続するコネクティビティ管理ツールで、セルラーPCを企業ITシステムに統合し、一元管理できる環境を提供するという。
EVCNを活用したセルラーPCの導入によって、最大50%のコスト削減が可能という。従来はオフィスにLANケーブルを配線し、Wi-Fi機器を設置し、サーバールームを用意する必要があり、機器購入費や保守費用が高額だったが、直接モバイルネットワークに接続することができるため、オフィス内のネットワーク機器の多くが不要になり、初期投資と運用コストを大幅に削減できると語った。
また、従来のテザリングではネットワーク接続に1〜2分程度かかっており、時間ロスが発生していたが、セルラーPCでは即時接続が可能となるため、月あたり約7時間(1営業日分)の削減効果が期待できるという。
滝沢氏は「デバイス、ネットワーク、付加価値サービスを統合することで、ゼロトラスト、セキュリティ、アジリティという3つの価値を企業に提供できる」と述べ、5Gが企業のDX推進に貢献すると強調した。













