NTTとロボットOSのMujinが資本業務提携、フィジカルAIの社会実装目指す

NTTとNTTドコモビジネス、Mujinの3社は2025年12月2日、資本業務提携を発表した。Mujinは独自のフィジカルAIとデジタルツイン技術で製造・物流業界のDXを手掛けており、トヨタ自動車をはじめ国内外の製造業が同社の「MujinOS」を搭載した製造機器・ロボットを活用している。そこにIOWNをはじめとするNTTの技術を組み合わせ、「フィジカルAIによる自律的な自動化社会」の実現を目指すという。

NTTの3つの強みとMujinの技術を融合

例えば、NTTグループには農業を手掛けるNTTアグリテクノロジーがある。

トマト等の農産物を画像認識して収穫するロボットを使った自動化・省力化などを行っているが、そこでは農産物の状態データを活用し、収穫ロボットの画像認識能力を高めている。そうしたデータやノウハウとMujinのロボット技術を組み合わせることで、「傷の有無によって出荷・選別を自動化するといったロボットの開発も可能になる」(爪長氏)。

そのほか、NTTグループの各社はインフラ保全や介護の現場など様々な領域でビジネスを行っており、そこで取得するデータを活かすことで多種多様なロボット制御を実現していきたいと同氏は話した。

協業を通じて目指す世界のイメージ

協業を通じて目指す世界のイメージ

この多様な業界のデータに加えて、ロボット自動化の進化においてNTTが貢献できることはまだ2つあるという。

1つが、AI技術だ。国産LLMの「tsuzumi2」や、ヒューマン・ロボット・インタラクション(HRI)など、NTTが開発する先進技術は、「ロボットと人間が自然な対話や対応ができるようになる」ことへ貢献する。

2つめは、計算基盤である。フィジカルAIの社会実装時には、大容量・低遅延の通信ネットワークと、高度なデータ処理を行う計算基盤が不可欠。ここはまさにNTTの得意分野だ。「ネットワーク、セキュリティ、データセンターをフルスタックで提供できるケイパビリティを有している」と、この分野でも大いに貢献できると爪長氏は述べた。

NTTドコモビジネスがロボットプラットフォームを提供

こうした両社の技術を融合し、具体化したソリューションを提供するのがNTTドコモビジネスの役割となる。

執行役員 ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部長の山下克典氏

NTTドコモビジネス 執行役員 ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部長の山下克典氏

同社 執行役員 ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部長の山下克典氏は下図表のように、NTTドコモビジネスが提供する「AI-Centric ICTプラットフォーム」にMujinOSを組み込むようなかたちでソリューションを提供する計画を説明した。ドコモビジネスのデータセンター(DC)でMujinOS、Mujinコントローラ等の機能を提供する。

NTTドコモビジネスとMujinの取り組み

NTTドコモビジネス(赤)とMujin(オレンジ)の技術・製品を組み合わせたソリューションを提供

フィジカルAIの制御のもとで複数のロボットが協調して動作する世界では、データ量もセキュリティリスクも飛躍的に増加する。それを支えるインフラには、「柔軟、安全、分散の3つの要素が求められる」と山下氏は話した。

ロボットの動作はトラフィックの頻繁な変動をもたらすため、ネットワークにはこれに対応する柔軟さが欠かせない。ロボット/産業機器には脅威対策の機能を実装するのが難しいため、プラットフォーム側でセキュリリティ機能を提供する必要がある。AI-Centric ICTプラットフォームでは、1分単位での帯域変更が可能で、セキュリティ機能もサブスク型で利用できる。

もう1つの「分散」に関しては、フィジカルAIを動かすためのGPUリソースを全国に分散配置・調達できるようにするため、「コンテナデータセンター等も活用して全国にリソースを配置し、ネットワークでつなげる」。

こうした特徴を持つAI-Centric ICTプラットフォームをベースに、DXソリューションやコンサルティング、デジタルBPOなどを含めたトータルソリューションを提供。「製造現場の人手不足解消や生産性向上に貢献する」と山下氏は力を込めた。

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