実運用は自社事業効率化から
AI・量子共通基盤は、量子技術の具体的なユースケースを創出することも大きな目的としている(図表2)。
図表2 AI・量子共通基盤の利用シナリオ

KDDIではまず、通信ネットワーク運用や電力系統の効率化といった「既存事業に徹底的に活用し、コスト削減に寄与する」(先端技術企画本部 先端企画統括部 企画グループリーダーの杉山浩平氏)計画だという。
次の段階として、物流・小売・製造など通信に近接する産業領域へ展開する。配送経路や在庫配置の最適化は組み合わせ計算が膨大になる典型であり、同基盤の適用効果が見込める。
そして、化学開発や創薬といった新規領域にも同基盤の活用を広げる。分子設計や化学反応のシミュレーションを量子計算で加速し、研究開発サイクルの短縮と競争力強化につなげる方針だ。
WAKONXに統合へ
AI・量子共通基盤は、2027年度末までに研究開発と検証を終え、プロトタイプを構築し、2028年度から商用提供を開始する計画である。初期は特定領域の法人顧客に特化したSaaSとして提供し、将来的には機能を共通化したAPIを実装し、広く法人向けPaaSとして展開する考えだ。その際、KDDIが提供するAIを活用した法人向けDXプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス、https://biz.kddi.com/wakonx/)」に同基盤を統合するのが基本的な方針だ。
その先にあるのが、B2B2Cへの拡張だ。「最終的には、汎用的な機能をASP化することも考えている」と先端技術研究本部 基盤技術研究部 量子計算機応用グループリーダーの稗圃泰彦氏。活用例としては、自動運転車両の配車制御と利用者の経路探索を一体で行うといったケースの汎用化による普及が考えられるという。
あらゆるユーザーが手元のデバイスを通じ、量子コンピューターを無意識に利用する時代が、現実の射程に入りつつある。












