“相性悪い”VDIとUCを共存させる ―― 日本HPがシンクライアントを機能強化

日本ヒューレット・パッカードは2013年7月3日、シンクライアント製品の画面転送品質を改善するソフトウェア「HP Velocity(エイチピー ベロシティ)」の新機能を拡張すると発表した。レイテンシーの高いネットワークにおけるVDI(仮想デスクトップインフラ)の利用、およびVoIP通話やビデオ等のリアルタイムコミュニケーションの品質改善を目的としたものだ。7月以後に出荷される日本HPのシンクライアント製品に標準搭載される。

プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション本部・本部長の九嶋俊一氏

プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション本部・本部長の九嶋俊一氏はクライアント仮想化について、大きく4つの課題が顕在化してきていると説明した。グローバル化によってレイテンシーの高い大陸間ネットワークの利用が避けられないことが1点目。さらに、ワークスタイルの変化によって、十分に品質が管理されていないネットワークでの利用が増えていることが2つ目として挙げられる。

3つ目は、UCの普及だ。特にビデオコミュニケーションの多用が、ネットワークの輻輳およびホストサーバーの過負荷を引き起こす。そして、無線LANの普及も、レイテンシーが高くパケットロスの多いネットワーク環境を増やしており、VDIの利用に適さない状況を作り出している。これが4点目だ。

VDI導入時の4つの課題

クライアント仮想化は、ネットワークの品質に画面品質が大きく左右される。「こうした課題を解決する機能をシンクライアントに組み込む」のが今回のHP Verocityの新機能の狙いだ。具体的には、パケットロスや輻輳の増減といったネットワークの状態変化に応じて動的にTCPフローを最適化する。レイテンシーの高いネットワークにおけるデータ通信のスループットを改善することで、快適な画面表示を実現する。九嶋氏によれば、利用しているネットワークの特性により異なるが、「平均で5から6倍のスループット改善効果がある」という。

HP Velocityによるスループット改善効果

もう1つの機能拡張が、日本マイクロソフトのユニファイドコミュニケーション(UC)基盤製品「Microsoft Lync」への対応だ。一般的なVDIの仕組みでは、ホストサーバー内でUCアプリケーションが稼働しメディア処理を行うため、スループットの減衰や輻輳によって映像・音声品質の劣化が起こりやすい。「VDIとUCは相性が悪い。水と油のようなもの」と九嶋氏は話し、特に大規模ユーザーがVDIとUCを導入する際の障害になっているという。

そこで、日本マイクロソフト、シトリックスと、VDI対応の新アーキテクチャを開発。メディア処理をクライアント側で行い、P2P接続によって音声・ビデオ通話を行う仕組みとした(下図)。VDI環境において、“相性の悪い”リアルタイムコミュニケーション・アプリケーションのみをローカル側にオフロードするわけだ。この機能はプラグインとして提供される。Lync2013の場合はマイクロソフトから、Lync2010の場合はシトリックスからそれぞれ提供されているプラグインを導入することで利用できる。

UC対応の新アーキテクチャ

なお、今回はMicrsoft Lyncへのサポートのみを発表したが、他のUCソリューションへの対応も予定しているという。

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